【インタビュー】電源切替器専業で100年の高田製作所 デジタル・脱炭素時代の電力の有効活用へ 新型電源自動切替器「ACMS-A」

これまで電力は電力会社から購入して供給されるものでしたが、いまでは自ら発電して使ったりと調達方法はさまざま。また使用についても、自社で使うだけでなく、貯める・蓄える、ほかへ融通するなど多様化しています。そのため電力網は、昔は一方通行の一本道だったものが、いまでは分岐ルートができて複雑化しています。だからこそ電気を安全かつ効率的に使うためにも電力の交通整理、制御が今まで以上に必要とされています。

高田製作所は、創業100年を超える電源切替器専門メーカーで、2023年2月に新製品となる電源自動切替器「ACMS-A」を開発・発売を開始しました。どんな特長を持った製品なのか?技術部 主査の岡野 功 氏と、技師の田中 和夫 氏に話を聞きました。

1919年創業 切替器を中心とする電源制御の専門メーカー

ーー御社について教えてください

当社は、1919年に東京都豊島区西巣鴨で配電盤と付属機械機器の製作を目的として設立され、2019年に創業100周年を迎えました。配電盤や電源装置に組み込まれる切替器を中心とした各種スイッチや電源制御の専門メーカーです。

戦後の1950年に電電公社や船舶関連、配電盤業界向けに切替器の製造・販売を開始し、国内外の工場やビル、商業施設、さらには発電所やデータセンターなど重要インフラでも同社の切替器が使われています。

製品は各種切替器をラインナップし、切り替えに電磁石の吸引力を利用し、安全性と省エネ性、使いやすさを追求した「マグネット切替器」をはじめ、半導体スイッチで2系統電源を切り替える静止型無瞬断切替器の「半導体切替器」、機械的動作の切替器と半導体スイッチを組み合わせたハイエンド切替器の「ハイブリッド切替器」、かんたん設置で手軽にバックアップできるリレー式電源切替器などを揃えています。また用途に合わせた切替器のカスタムメイドにも対応しています。

電力系統をスムーズに切り替える電源切替器

ーー電源切替器とは、どんな装置ですか?

建物や工場、ビル、商業施設などの電源は、電力会社と系統をつないで電力供給を受ける一方で、災害や非常時に対応するために自家発電機など別系統の電源にもつなげています。

電源切替器は、停電や突発的な事情が起きた際、電源のルートを常用から非常用への切り替えをスムーズにする装置です。電源切替器がない場合、別系統に切り替えるには専門の電気工事士に依頼をして、常用から電線を取り外し、非常用に繋ぎ直すという電気工事が必要になりますが、非常時にそんなことができるはずもありません。そのためBCPや防災上、建物への電源切替器の導入は当たり前となっています。常に稼働している装置ではありませんが、万が一の際には確実に機能する必要があります。信頼性が求められる装置で、万が一の備えとして、見えないところで電気の安心安全を守っています。

また電源設備は定期的な点検の実施が法律で決まっていて、その際も系統を非常用に切り替える必要があります。近年は電気工事士の数も減っていて、彼らの業務を効率化し、安全に電気を使えるようにするためにも有効活用されています。

電源切替に必要な機器を箱に収めてパッケージ化

ーー新製品の「ACMS-A」とは、どんな製品ですか?

機能としては、2系統の電源を自動で切り替える切替器で、商用電源と非常用発電機とを接続して停電時のバックアップに使ったり、独立型の電源システムの太陽光発電システムのパワーコンディショナと商用電源の2系統をつなぎ、普段は自家消費の電力を使い、非常時には商用電源に切り替えてバックアップとするなどの用途で導入されています。BCPや脱炭素に向けて再生可能エネルギーのニーズが高まるなか、安定して電気を使うための装置として高く評価されています。最近では災害対策や再生可能エネルギーの設備としての補助金制度の活用に付帯設備として採用頂く企業様も増えています。

これまでの電源切替器は、通常は制御盤メーカーに依頼して電源切替盤としてイチから設計して作ってもらうのが一般的でした。当社はそこに向けて、盤用機器メーカーという立場で、盤に組み込まれる電源切替器を提供してきました。

しかし建物の施工主や管理会社にとっては、建物を建てるたびに毎回仕様を決めて電源切替盤を発注するのは手間がかかることから、切替器の専門メーカーである当社が電源切替盤を標準化し、必要な機能を一式揃えたパッケージとして購入できるようにしたのが「ACMS-A」です。100Aから400A、単相から三相まで全25種類をラインナップし、すべて仕様書も用意して、お客様は自社に必要なものを選んで購入するだけという使いやすい製品になっています。

切替・保護機能の精度を強化 必要な時だけ確実に切り替わる

ーー開発のきっかけと改良した点など

これまで通りの電源切替器では他社との差別化、付加価値を高めるのは難しく、新しいチャレンジが必要でした。そこで、これまで当社でも要望に応じた電源切替専用盤を設計・製造して提供していくなかで、電源切替が1つのアプリケーションとなって機器の組み合わせで納品するケースが増えてきていたことから、思い切って電源切替盤を標準化し、必要な機能を箱に収めてパッケージ製品化しました。

箱に収めたというのが最も大きな改良点ですが、それ以外の基本性能も向上しています。例えば切替・保護機能の精度について、従来モデルは電圧が安定したら即切り替わるという形でしたが、今回は電圧のレベル監視を追加して、電圧が安定したのを判断してから切り替わる形とし、必要な時だけ切り替わるようバージョンアップしています。これまで何十年にわたってお客様先で切替動作が発生した時の状況に関する情報・データをたくさん収集・蓄積してあり、それをもとに切替・保護機能の精度を高めています。

また、配線の口を筐体の側面と下部に設け、設置の柔軟性を改良しました。横と下から電線を取り出せるので配線の取り回しがしやすくなっています。

また、ACMS-Aは標準品、パッケージ製品となっていますが、お客様の要望に応じてカスタムにも対応しています。例えば、ランプや箱の色やブレーカの有無、配線、ハンドル形状など細かいところにも対応します。

電源の多様化によって電源切替器の需要も拡大

ーー電源切替器の市場の見通しについて

これまで電源といえば電力会社から供給される商用電源ばかりでしたが、いまは自家消費など電源の選択肢が増え、今後さらに広がっていくと思います。電源が多様化し、複数を利用するとなると、そこには必ず切替器の設置が必要となります。

身近なところでも、自家発電やスマートグリッドといった地産地消の電源をどう切り替えていくかという問題や、電気代が高騰するなかで自家発電と蓄電池、商用電源を組み合わせて最も安い使い方をするために切り替えを頻繁に行いたいというニーズも出てきています。実際にACMS-Aとは別モデルの切替器ではありますが、自家消費型の太陽光発電システムと蓄電池の切替用に某ハウスメーカーのオフィスに採用されました。

電気を安く安全に使うためにも電源切替器の市場は今後拡大すると見ており、標準化されてパッケージになっているACMS-Aはとてもお役に立てるものだと思います。

多様化する電源システムの必需品として提案を強化

ーー今後に向けて

発売したばかりなので、多くのお客様に使っていただき、色々な声を聞きたいですね。小型化など改良点や伸びしろは沢山ある製品なので、お客様の反応を元に改良をしていきます。また、電源切替器はいざという時に動かなければいけないものなので、いつでも確実に動くようにする必要があります。これで大丈夫というところはなく、機能強化を続けていきます。

ACMS-Aは電源切替器の専門メーカーが作った電源切替盤のパッケージ製品であり、長年の切替器の実績もあり安心して使うことができる製品です。これが電源切替器の次の時代への第一歩になり、当社のブランドを強化できればと考えています。

電源切替器はこれからの時代、電源システムには必須の製品になり、脱炭素やBCP、防災などにも役立ちます。これをもっと浸透していけるよう提案を強化していきます。

高田製作所 https://www.takadass.co.jp/

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