先日、2年前の制御盤DXメッセでお世話になった富山県の制御盤メーカー・東洋電制製作所にお邪魔した。同社は月産で1200面超の制御盤の生産能力がある有数の制御盤メーカーで、数年前からデジタル技術を取り入れて制御盤の設計製造の効率化を進めているが、それがさらに進化していて驚いた。
通常、制御盤メーカーは顧客の求めに応じて制御盤を製造して納めることで収入を得る。「モノを作って売る」いわばものづくりの王道ビジネスだ。しかし同社は最近、新たな案件で挑戦を始めている。何をしているかというと、ある機械メーカーのDX戦略の一環として進めている製品の設計製造プロセスのデジタル変革に共創パートナーのような形で参画し、制御盤に関わる部分の新たな工程の開発検証を一緒になって進めているそうだ。同社のデジタル化の取り組みを機械メーカーが耳にし、そこから声がかかったのがきっかけとのこと。制御盤を作って売っていたメーカーが、自分達の技術やノウハウが求められ、制御盤を作らずに知的財産が商品となって受注にいたった。これはまさに「モノ売りからコト売りへ 制御盤メーカーのサービス化」。この挑戦はまだ始まったばかりで、先のことは分からないが、制御盤メーカーにもこういうニーズやチャンスもあるということを見事に証明してくれた好例だ。
DXやGXなど変革しなければならない時代、いま製造業各社が求めている、欲しくてたまらないのは、工場や工程にまつわるノウハウだ。FAの機械や機器は世に溢れているが、それを買ってきただけでは歩留まり改善もリードタイムの短縮も脱炭素も果たせない。そこにノウハウや有効な知識と技術が組み合わさって始めて効果が出るのだ。それを持っているのは、自ら工場や工程を構築・改善し、効果を出した人や企業だけ。周りから見れば、それは貴重で有益な知的財産であり、まさに「現場力」。モノ売りからコト売りへ。簡単なことではないが、制御盤メーカーをはじめ、メーカーに属する企業はあまねくその素材を持っている。あとはそれを加工して売り出すだけ。ぜひチャレンジする企業が増えてほしい。