令和の販売員心得 黒川想介 (96)窓口機能は受け身のスタイル 持続的拡大目指す攻めの営業

10年ひと昔と言われるがひと昔前には販売員はまだ携帯電話が主流でスマートフォンを持っていなかった。顧客とのやり取りでパソコンメールが多くなったのはもうひとつ昔のことである。その20年間に販売員と顧客の間では合理化が進んで、それまでは訪問をして実行していた多くのやり取りはスマートフォンやパソコンで済ましている。販売員一人当りの売上額は携帯やパソコンが普及してないかった時と比べると少なくとも倍の売上額になっている。売上額が倍になっているからといっても販売員の営業能力が飛躍的に向上したということではない。製造業の設備投資が活発に行われ、使用される機器や部品の需要が大幅に増えて売上は飛躍的に多くなった。その売上処理や対応にパソコンやスマホが大いに貢献しているのだ。かつてパソコン等の情報機器が未発達の時に設計技術者は商品に関連する色々な情報源として販売員の訪問を受けいれた。現状ではネット関連技術の発達で販売員と技術者の関係は変っている。今の技術者は販売員に情報源として期待することは少なく、商品を採用する段になって声をかけて説明を求める事が多い。

 その反面、販売員の訪問を気軽に受け入れなくなった。販売員が営業能力を上げるには机上ではなく実戦に依るところが大きいのに訪問回数、滞在時間ともかなり減っている。若手の販売員に聞いて見たことがある。「顧客は君達をどのように理解して付き合ってくれているのか」と。考えたことがなかったと言って考えた末に、ある販売員は便利屋に見られているのではないかと言った。なる程、時々商品PRがてらどんな仕事を手がけているかと様子見の訪問をするが、大半は顧客から依頼される用件や案件での訪問だ、当らずと言えども遠からずである。便利屋を言い換えて窓口機能営業と言えばピタリと来る。窓口機能は経験や便利なツールによって応対や処理の効率を上げることができる。しかし幾ら効率を上げても売上額は顧客次第ということになる。つまり窓口機能は受身であり売上を拡大する機能ではないからだ。現在は一時期の成長期のように多くの顧客が増設をする時代ではない。つまりこれまで付き合って来たマーケットは販売店にとって完成されたマーケットなのだ。だから高機能化商品や複合化している商品の説明力を上げても窓口機能営業に終始するならば好運でもない限り売上額は上らない。窓口機能を売上額を確保することは大事であるがそれだけでは持続的売上拡大は望めない。営業には攻めと守りがある。守りが窓口窓口機能営業なら攻めはマーケット開拓営業である。マーケットの開拓といっても販売員の場合はメーカーとは違って商品を作るわけではない。メーカーの場合標的マーケット向けの商品を開発するからその商品を持って標的マーケットへ切り込める。しかし販売店の場合は信頼関係を構築している顧客が当座のマーケットなのだ。現在の顧客の想定外商品を売り込んでも意味はない。したがって当座のマーケット開拓とは商品ありきで切り込んで行くことではなく、顧客の中の売上のない部門への進出なのだ。

 そして信頼関係を作っていくことだ。仮にまだ信頼関係のない他の部門で使うのかもしれない商品を一ツ見つけたとする。その部門をなんとか紹介してもらってアプローチをする。仮にその商品が売れたとしても継続して案件や相談が舞い込まれなければ信頼関係ある顧客にできないのが窓口機能営業である。せっかく一ツの商品が橋渡しをしてくれたのだから顧客にする営業力こそが攻めの営業の根本になければならない。

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