令和の販売員心得 黒川想介 (97)誰もが「自尊心を満たしたい」「欲求」意識した人間関係構築

マズローの欲求五段階説を研修で学んだ営業関係者は少なくない。人間は欲求によって行動する。その欲求は生きたい、生存したいという欲求から始まり、自分が描く理想の生き方を実現したいという自己実現の欲求まで五段階になっているという説である。三段階目に所属の欲求というのがある。この欲求は人間が安定した生活を送れるようになると人の集団の中に入りたくなる欲求である。

 脳科学によれば人間には他者との関わりが精神的安定には欠かせないことであり、それは睡眠や運動が心身の健康には欠かせないのと同じだと言う。この様に人間には何かの集団に属して他者と関わりたいという欲求が脳に組み込まれているのである。他者と関わらなければ心が安定しないという一方で他者との関わりである人間関係に悩むことも事実である。転職ばやりのご時世であるが転職の理由のトップは人間関係というデータが示すように販売店が採用するほとんどの販売員は新卒ではなく転職組である。転職組の販売員は社内の人間関係に留意し円満に築こうと努力する。だからと言っても他人とうまくやっていくためにトラブルを避け、相手の言いなりになるだけではいずれフラストレーションがたまって人間関係に失敗する。マズロー説では欲求の第四段階目に尊厳の欲求を置いている様に人間は誰でも自尊心を持っている。この欲求は誰でも自分の自尊心を満たしたいという欲求である。自分を認めて欲しいのだ。社内で人間関係がうまくいっている時のことを思い出してみると相手に妥協しているだけのように見えても自分の事をなにげなく認めさせているはずだ。それにはかなりの努力が必要である。自尊心が満たされれば他人の望みに関しても寛容になれる。だから人間関係を築くにはまず相手の自尊心を満たすために積極的に耳を傾けて相手を受け入れることから始めればいい。営業の現場で攻めの営業をする時に人間の本性を理解することが特に重要である。攻めの営業とはこれまで作り上げてきたマーケット以外への進出営業である。他のマーケット進出には三通りある。一ツ目は現有商品群を持って他の地域で顧客開拓をすることである。二ツ目は現有商品とは違った毛色の商品が売られているマーケットへの進出。わかり易く言えば口座ある顧客内でも一切相談がこない部門が存在する。その部門への進出である。

 三ツ目は現有商品を購入してくれるFAマーケットの中に案件や相談がこないマーケットがある。そのマーケットへの進出である。そのマーケットには二種類ある。①いつも案件を出してくれる顧客が意識して分別している場合。例えば回路系とアクチュエーター系の機器部品を分けて別々に案件を出している。②マニュアルで動いている現場には気づかない潜在マーケットがある。それを発見し進出する。以上の三通りのマーケットへ進出するには現有の商品に頼って得々とアピールするのではうまくいかない。人間関係づくりを強く意識して始める営業である。確かに進出するマーケットに関係ある商品や情報を紹介がてらアプローチするのが一般的な流れである。それでも新しいマーケットへの進出営業の本質は人間関係構築なのである。営業と新規客は利害が支配するビジネス関係であっても人の本性は変らない。だから販売員の売りたいという欲求をしばし忘れて、自尊心に着目し相手を積極的に認める事に専念すればいい。それには相手に口を開いてもらう必要がある。前から言ってきた名刺を活用して話題を探ることはその一例である。

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