アドバンテック、製造業のAI 構築・活用の最新情報を発信「産業用AI もここまで来た!Tokyo AI フォーラム」開催レポート成功のカギは「パートナーエコシステム」

アドバンテックは2023 年4 月20 日、東京・神田のKANDA SQUARE で、AI をテーマに
した「産業用AI もここまで来た!Tokyo AI フォーラム」を開催し、産業用AI 活
用とその可能性に関心が高い100 人以上が参加しました。製造業DX とスマートシティを
テーマに、エヌビディアをはじめ、先進的な企業11 社が出展して産業用AI の最新動向と
自社の取り組みを解説しました。
本記事では、会場の様子とセミナー内容をダイジェストにまとめて紹介します。

エッジコンピューティング・エッジAI に力を入れるアドバンテック

イベントは、第1 部がキーノートスピーチとしてアドバンテック、エヌビディア、マクニカの3 社が、第2 部は製造業DX(コンピュータマインド、タカノ、フツパー、アイシ
ン)とスマートシティ(ニューラルグループ(旧社名ニューラルポ
ケット)、AWL、アジラ、Allxon)に分かれて講演が行われました。
はじめにアドバンテック 執行役員 インダストリアル IoT 統括事業本部 WISE-IoT 統括事業本部 統括責任者 古澤 隆秋氏による「次の扉をノックする AI 共創パートナー」のキーノートスピーチでイベントがスタート。
グローバルのAI 市場は2022 年時点で16 兆円、2030 年には200 兆円まで拡大すると予
想されています。特にIoT プラットフォームとエッジAI の領域が有望とされ、同社はエッジAI に注力しているとのことです。
産業用AI は製造業、交通、セーフティ、小売、ヘルスケア、農業など色々なところで新しいビジネスがスタートしていますが、各アプリケーションによって必要とされる技術、ハードウェアとソフトウェアは異なります。例えば交通ではたくさんの監視カメラが使われ、それがPoE でつながり、屋外利用も多いことから耐環境性能は必須。ヘルスケアでは医療用の規格や4K 画像などが不可欠で、それぞれに合わせた組み合わせを考える必要があります。
同社はポートフォリオとして、産業用PC 以外にも、センシングレイヤーでセンサからの
データを無線で飛ばすIO ユニットや振動センサ、イーサネットスイッチ、それを処理するエッジコンピュータを持ち、さらにソフトウェアを入れてオンプレシステムを構築したり、クラウドのWISE-PaaS というサービスも取り揃えています。AI 関連も、医療グレードや交通・鉄道向け産業用PC をはじめ、ビデオ&グラフィックカード、Jetson 対応のIPC やビジョンカメラ、さらにはAI サーバーや推論サーバーなどエヌビディア のGPUを搭載した製品を多数展開しています。
また、AI 開発・運用に関わる情報をひとつにまとめ、可視化して管理もできるAI フレー
ムワーク「WISE-IoT Suite」を開発し提供を開始。日本でのインフラサービスのAI を開
発・運用するにあたっての管理の煩雑さを解決できるとのことで複数実績を頂いております。

まとめとして古澤氏は「AI とIoT をつなげていく、開発して実装して運用してくには、1
社1 社ではできず、パートナーと一緒になってエコシステムでやっていくことが多く、各アプリケーションの組み合わせになっていきます。ぜひこの後の講演で、AI はここまで来たということをエヌビディア様にお話しいただき、マクニカ様に実際の実装でどこまでできているかを解説いただき、第2 部のパートナー様による製造業DX とスマートシティの独特のアプリケーションについて、ここまでできるという話を聞いてもらえればと思います」と話しました。

生成 AI、メタバースを強化するエヌビディア

続いては、エヌビディア合同会社 日本代表 兼 米国本社副社長 大崎 真孝氏による「新AI
時代を切り拓く、NVIDIA の挑戦」。GPU の世界トップメーカーであり、AI の有力プレイヤーである同社がいま何を考え、取り組んでいるのかを紹介しました。
同社はグラフィックスのGPU からスタートし、データセンター(DC)のコン
ピューティング、AI へと事業を拡大。特に近年はAI で成長が加速し、売上高も20232 年
会計年度は270 億ドル、時価総額では5 千億ドルとも言われ、社員数も2万4000 人にまで増加しています。グラフィックスとAI、コンピューティングが相互連携していることが技術的な優位性を生んでいます。

いま同社が力を入れていることは「サステナビリティ・生成 AI・インダストリアルデジタリゼーション」の3 つ。
1 つ目のサステナビリティでは、AI は大量のデータを高速で処理するために膨大なエネルギーを消費するため、ハードウェア、ソフトウェア合わせたシステムでエネルギー消費の最適化を進めています。

2つ目の生成AI(ジェネレーティブAI)は、単に質問に答えるだけでなく、映像や音楽などあらゆるものを作り出すことができ、すべての産業が変革する可能性があると捉えて事業を強化しています。エヌビディアはカスタム生成AIのためのクラウドサービスとして、大規模な言語処理モデルをカスタムして作れるNVIDIA Nemo、言語モデルを画像や映像、3Dアプリケーションに出力できるNVIDIA Picasso、創薬用に特化した生成AIのNVIDIA BioNemoの3種類が含まれたNVIDIA AI Foundationsを発表しています。

3つ目のインダストリアルデジタリゼーションでは、グラフィックスとAI、コンピューティングの技術を活かしてメタバースを強化。NVIDIA Omniverseは、倉庫や工場、街などを仮想空間上に作って物理シミュレーションができるメタバース プラットフォームで、BMWの工場やAmazonの物流センターではOmniverse上で生産性や安全性を検証しているとのことです。

大崎氏は「生成AIで加速する成長はあらゆるところに及び、これは止めることはできないトレンドです。データセンターでAIを作り、それを現場に落とし込むソリューションとしてエッジAIがあり、それらがつながることで世界中でAIが作られています。AI技術を無理に取り込む必要はありませんが、世界で何が起きていて、AIの得意な分野はどこなのか、何に使えて何に使えないかを見極めることが必要です」と締めくくりました。

マクニカ、サイバーフィジカルシステム構築を支援

キーノートスピーチの最後はマクニカ クラビスカンパニー ビジネスソリューション第2統括部 統括部長 内田 洋都氏による「最先端AIテクノロジーの実装に向けた取り組み〜求められるコンピューティングインフラ〜」とし、AIを開発運用するために必要なインフラを紹介しました。

マクニカは、半導体とセキュリティ、ネットワークをコア事業とする技術商社。1200人以上いる同社のエンジニアが、国内外のテクノロジーパートナー300社と一緒に、顧客に伴走して価値提供するエコシステムを強みとしています。AIに関しては、エヌビディアのパートナーとしてハードウェア、ソフトウェア、SDKをフルラインナップで取り扱い、サイバーフィジカルシステム(CPS)の実現を目指し、そこに向けたインフラ提供と構築に力を入れています。

エッジコンピューティングのインフラでは画像処理や言語処理等の認識機能とリアルタイム処理など高度な処理が必要となるため、AIボックスのようなAI搭載のエッジサーバーの選定と使いこなしが重要となります。データセンターのインフラでは、高性能なコンピューティングリソースと高速なネットワークを効率よく活用する必要があり、オープンソースのスタックも増えて管理が大変になっているため、同社はエヌビディアのCUDAベースのアーキテクチャを採用することでモデル開発のスピードアップを提案しています。

こうした便利なプラットフォームを顧客に実際に体験してもらうため、仮想GPUやGPU効率化ソフトウェア、Omniverseなどインフラを試せる検証環境などを用意。さらに自社でOmniverseを活用した自社の物流センターのデジタルツイン環境を構築してAI活用を行なっているとのことです。

AI技術の発展にはエコシステムが重要となり、同社ではスマートファクトリーの実現に向けた活動をしている製造業の専門チームや、CPSのセキュリティ課題を考えるサイバーセキュリティのチーム、モビリティ、DX支援するコンサルティングチームなど専門チームを設けて支援体制を強化しています。

内田氏は「目指すべき姿は、あらゆる情報がデジタル化され、ビッグデータ活用されるCPS構築の手伝いをすること。その適用範囲は広く、もっと知見を蓄積することが必要になっています。各分野のデータを連携させてインテリジェンスを獲得するCPSを実現できるよう、グローバル視点で新しい技術やソリューションサービスをお届けできるよう邁進します」とまとめました。

製造業DXでのアプリケーション事例を紹介

第二部は、製造業DXとスマートシティでテーマごとに分かれてセミナーを実施しました。

製造業DXでは、コンピュータマインド 代表取締役社長 萱沼 常人 氏による「製造業でのAI製品化事例とWebAccessを中心とした、AI・点群データソリューションの連携」を皮切りに、タカノ 画像計測部門営業部営業1課 木下 彰訓 氏が「高速画像検査におけるGPU・AIの活用事例」でフィルム検査装置へのGPUとAIの活用事例を、フツパー 関東支社長 萩原 啓悟 氏が「最新テクノロジーを確かな労働力に!外観検査AI導入の失敗例/成功例」として外観検査自動化のポイントを定量化して紹介。さらにアイシン DX戦略センター DS部 スマートファクトリーAI開発室 マシンビジョングループ 桒原 伸明 氏が「AI外観検査導入の勘所」として外観検査導入の経緯などを講演しました。

スマートシティでは、ニューラルグループ(旧社名ニューラルポケット) 常務執⾏役員 デジソリューション事業本部 本部長 兼 ニューラルエンジニアリング 代表取締役 社長 岩切 翼 氏による「エッジAIソリューション導入の変遷」、AWL 取締役CTO 兼 AI HOKKAIDO 所長 兼 弁理士 土田 安紘 氏による「エッジAI今後の技術・ビジネスの展望」、アジラ 執行役員CTO 若狭 政啓 氏による「行動認識AIの概要と社会実装に向けた取り組み」、Allxon 日本担当 関 智之 氏による「エッジAIデバイスのリモート監視ソリューション」の4つのセミナーが行われました。

また会場内は講演の合間に実機を見られるように各種展示を実施。今回の主要テーマとなっていたエッジAI製品のほか、外観検査のデモ展示、人物の行動検知等がデモ展示されていました。

参加者からの評価は上々 次回に期待する声も

参加者は、装置メーカーなどの製造業・システムインテグレーター(SIer)、販売代理店等を中心とした100人で、参加者アンケートでは、「 AI活用のソリューションだけではなく、技術者・開発環境の導入支援など幅広く学ぶことができました」(装置メーカー・東京都)、「単なる製品紹介に終始することなく、有力会社の責任者による生の声が聴けて良かったです。各社様々なカラーがあって興味大!です」(設備管理・東京都)、「現在のAIのトレンドや技術革新の概要を知ることができた。今後自社でどのようにAIを展開していくべきかを考える良い機会となりました。また、実際の活用事例も参考になりました」(食品製造業・新潟県)、「外観検査に取り組んでおり、失敗事例を含めた説明が多くあり、どのような点について注意を行うかが明確となり、参考になりました。近年のAIの動向についても確認することが出来、今後の活用についての道筋は立てる事が出来ました」(製造業・神奈川県)など、高評価の声が多かった様子。次回開催は未定ですが、この結果を受けてアドバンテックでは「検討したい」としています。

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