戦において自陣の旗印を掲げるのは、自軍の兵に居場所を知らせる目印となり、集団を統率しやすくすること以外にも、戦う相手に自分たちを知らしめ、萎縮させて優位に立つ効果もある。相手の旗印を見ただけで逃げ出したなんて例も度々あったようだ。
そんな旗印のなかで最高峰にあるのが、お上が認めた軍隊の印となる「錦の御旗」。錦の御旗が使われたケースで最もよく知られているのが、幕末から明治にかけての戊辰戦争だ。兵力も圧倒的に多く、優位にあった幕府軍が、維新政府が錦の御旗を掲げたことによって攻撃をやめて撤退し、それ以降、離反も相次ぎ、結果、敗北にいたる大きな転換期になった。錦の御旗を掲げたことで自らの正当性を示して自軍の士気を高め、相手を逆賊認定して弱体化させた。それと同時に、官軍として周りからの支持を集められるようになり、以降の明治維新がうまく運ぶのに大きく貢献した。戦とは単に腕力だけでなく、頭脳戦や情報戦、さらにはイメージ戦略でもあることがよく分かる。
製造業各社は、競合他社と製品の開発販売競争を繰り広げ、かたや限られた人手や資本の獲得競争を行っている。全方位が最前線となり膠着しがちな中、それを打ち破るカギとなるのが「広報活動」だ。自らの正当性、優位さを内外に知らしめ、人と金が集まる環境を作れるかどうかは広報活動が大きく左右する。特に人手不足で企業の土台が揺らぐ中、新卒・中途問わず人材を集めて戦線を維持するためにも、今まで以上に業界内外への広報活動が重要となる。周りが畏怖する旗印、馳せ参じたくなるような旗印を作り、掲げるのは広報の役目。情報を制するものが戦を制す。