ラグビーW杯から考えるユーティリティプレイヤーの有効性

ラグビーワールドカップがフランスで開催中だ。日本も善戦を続けており、10月28日の決勝戦まで楽しみは続く。ラグビーは他のチームスポーツに比べてポジションによって役割と適性が大きく異なる。例えばスクラムの最前列を務めるプロップとフッカーは、重くて重心が低い体格が適し、一方でスクラムやラックのような接点からボールを出して捌くスクラムハーフは、体のサイズよりも敏捷性や器用さが求められる。トライゲッターとなるウイングもスピード重視。こうした強みが異なるもの同士が同じフィールド内で協力してプレーするのがラグビーの真骨頂。こうした特性からラグビーは多様性を活かしたスポーツとして評価されている。

ラグビーのポジションは役割と適性がある程度決まっていることから、プレイヤーはポジションを選んだ瞬間からスペシャリストへの道まっしぐら。替えの効かないプロップ・フッカーは専門職として特別にルール化されており、他のポジションも基本的には専門職化して特化している。しかし期間限定で激戦を繰り広げるワールドカップに出るレベルの国やプレイヤーは、複数ポジションや役割をこなすことも選考要素になっていて、専門性だけでは代表になれないレベルのところも少なくない。日本代表の顔ぶれを見ても複数ポジションで活躍している選手が多く見受けられる。会期中にチームに帯同できるメンバー数や試合のリザーブ入りできる人数は制限があり、複数ポジションがこなせるユーティリティ性の高いプレイヤーは、戦力ダウンのリスクを減らし、戦術の幅を広げてくれる頼もしい存在。決まったリソースのなかで最大限の結果を出すにはユーティリティ性は不可欠だ。

近年、日本でも「ジョブ型」としてスペシャリスト人材を育成する動きが出てきている。今はそれでいいかもしれないが、人手不足で人的資源が限られるなかで、さらに高みを目指す、付加価値を産むには、複数領域の専門性を持つ人材の育成と、彼らが活躍できるようにすることが必要だ。AIや自動化の進化は早く、ひとつの専門領域ではすぐに陳腐化する恐れがある。複数の専門性を持つ、または応用を効かせられるユーティリティ性があればその心配はいらない。最小の資本で最大限の成果を出すには、スペシャルな領域を持つゼネラリスト、または広い対応力のあるスペシャリストの力が必要だ。ユーティリティプレイヤーが日本の製造業を救う。

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