これまでに販売店は売上が低迷した時、まっ先に頭に浮かぶのは新規客開拓であった。今でも新規客開拓で売上低迷を打開したい気持ちは同じである。しかし以前とは違って中小の販売店にとって新規客開拓はかなり難儀なことである。難しいからといっても手をこまねいているわけにはいかない。次に頭に浮かぶのは商品の種類をふやすことである。これもあまりうまく行かずに売上は浮上しない。販売店にとって売上低迷を打開するには新規客開拓と商品の種類をふやすという考え方は間違ってはいない。売上拡大の方法は間違っていないけどうまくいかないのはこれまでやってきた営業のやり方を踏襲するからである。 現在の販売員の攻めの営業は新商品や戦略商品を売り込んで商談テーマを掴むことや商品の使われ方をアピールして商談に持ち込むことである。この様な攻めの営業と同じやり方で新規客開拓や新しく取り扱う商品拡販をやってしまう。顧客側の事情は以前とはかなり変っているのに販売員はその事情に対応していないことになる。ではその事情を考慮した新規開拓や商品をふやす拡販をどう考えればいいのか。
販売員に向って「一生懸命営業活動しているのに売上が伸びないならマーケットを変えて見なさい」と言うと販売員は「マーケットとは客先のことですか」と聞く。確かに商品という目を通して見ればその商品が売れる所がマーケットなのだから間違いではない。それでもマーケットとは客先側にあるものだから商品の側から見るとは正しくはない。現在のように隆盛を誇っているFAマーケットは最初からあったわけではない。顧客のニーズから商品が生まれてその商品マーケットが作られた。最初は位置を制御するニーズから商品が生まれ、その商品を持って位置の自動化マーケットを追い求めた。やがて経済の発展に伴って顧客側のニーズは時間・レベル・数値・温度・圧力等々の自動化に広がって、それらのマーケットが次々とできてきた。昭和のマーケット開拓期で育った販売員はこの先にどんなマーケットが誕生するのかという目を持つことができた。平成期にはFAという自動化マーケットがほぼでき上がった中での営業活動であったから売上拡大のためにマーケット開拓をするという気運は薄れた。その結果、売上不振打開策にはマーケット開拓ではなく、新規客開拓という活動になった。
FAマーケットの規模は消費者向けマーケットに比べれば小さいが、決して小規模ではなく安定している。だから中小の販売店は良好な顧客をしっかり掴んでいれば、あとは新規顧客や商品の種類は自然増におまかせ的にしていれば売上確保はできていた。しかし令和年間には経済は大きく飛躍するからFAマーケットは変るだろう。そうは言っても現在の販売員はマーケットとは顧客を意味し顧客の製造設備の自動化需要を一括してFAマーケットとして認識している。だからFAマーケットの中には色々なマーケットがあるという感覚で販売員は顧客を見てない。製造工場の中には部材の入荷から製品の出荷まで様々な工程やかかわる部門がある。それら一ツ一ツはマーケットを構成するという目を持って見れば自分達はどのマーケットで稼いでいるのかわかる。見逃していたマーケットや今後変っていくマーケットもわかってくる。だから令和の新規開拓は新規マーケット開拓と位置づけて活動をする必要がある。社会は変り製造工場も変わる。何が変るのかは製造工場の部材入荷から製品出荷までを大まかでいいから細分化して見て自分に合ったマーケットを見つけるのは営業力である。結果的に商材はふえる。