急所93で、マーケットインの次に来るこれからの時代としてユーザーインについてご紹介しました。そこでは、ユーザーインという新しい時代に向けて、モノづくりをしている私たちでしかできない商品を開発しましょうということで、10分の1や10倍の桁違いの性能を追求するという切り口をご紹介しました。
そして今回は人の手の活用という切り口で、ユーザーインに対応するもう一つ別の切り口のお話をいたします。
多くの工場で、生産性の向上や技術力アップを目指して設備を増強したり、改良を行ったりしています。チューンアップされたスピードの速い自動化設備は、強いモノづくりの柱であり、差別化の強い武器になることは間違いありません。同じものを大量に作ることによって品質、コスト共に強化されるからです。
しかし、いくら優れた設備でも機械で造れるのは製品までだと思います。均一化されることは良いことですが、一方で面白みがなくなるという側面は否定できません。個々のお客様のそれぞれの好みに応えるということはできないからです。そして製品である限り、価格競争から抜け出ることはできません。なぜなら人は「機械で造っているモノ」には安さや機能性を求めるからです。
ユーザーインの時代では、個々のお客様のご要望お応えすることが求められます。そのことの実現のために、製品の域を超えて、価値を売れるようにしたり、ブランドを高めていこうとしたりするなら、「職人技」や「手間暇(てまひま)」を投入するべきでしょう。製品を売って利益を出せるのは大量生産・大量販売で勝負できる大手企業だけではないでしょうか。
生産性向上の観点から、人手をいかに省くかを追求することはとても重要です。しかしユーザーインの時代に向かっていく中で、中小メーカーは、付加価値で勝負できるように、むしろ人の手の作業を、どこかに加えられないかを考えることも大切です。お客様の様々なご要望を人の手で微妙にかなえることができるようにするのです。
■著者プロフィール
【略歴】柿内幸夫 1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授。著書「カイゼン4.0-スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など。
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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https://www.kaizenproject.jp