IMFによると、2023年の日本の名目GDPは前年比0.2減の4兆2308億ドル(633兆円)になり、ドイツ (4兆4298億ドル 8.4%増)に抜かれて4位に転落するとのこと。国土が広く、人口が多い1位の米国、2位の中国に差をつけられるのは地力からして仕方がないことだが、日本とドイツは、国土の広さは37万㎡と35万㎡、人口は1億2000万人と8400万人。ほぼ似たような背格好で、中小企業が多く、自動車や機械産業などの製造業が経済の柱になっているなど共通点も多いことから、勢いで大きな差がつき、全体でも抜かれたというのはとてもショックだ。
ドイツといえば、2011年に国策として「インダストリー4.0」を打ち出し、いまの世界的なDXや変革の口火を切った国だ。インダストリー4.0が提唱された当時、ドイツ国内は製造業をはじめとする産業分野でも中国など新興国の勢いに押され、国内の雇用や経済を支える中小企業が厳しい状況にさらされていた。それに対して国内産業の競争力を高め、稼げる体質になって豊かになっていこうとして進めたのがインダストリー4.0であり、そのツールや手段としたのがデジタルによる生産性向上だった。それから10年超が経ち、最近ではインダストリー4.0という言葉を聞かなくなり、一部では「インダストリー4.0は失敗した」なんて意見が出るほどだったが、結果としてどうだろう?少なくとも堅調に成長を続け、名目GDPで日本を抜いて3位に上がった。日本が自滅しただけという人もいるが、ドイツが低成長を続けていたらこうはならなかった。少なくともドイツはインダストリー4.0を止めることなく地道に積み上げてきた。その結果がこれだ。
翻って日本はどうだろう?日本は少子高齢化が進む課題先進国であり、デジタルの力でその課題を解決し、世界のモデルケースとして国際競争力を上げていくと言っていた。しかし今では逆に課題の数も種類も増え、既存の課題も深刻化して危機的状況にある。インダストリー4.0に乗っかって「Connected Industires」を打ち上げたが、いまやその行方も分からない。日本は世界3位の経済大国という看板にあぐらをかいてきた。今こそ目を覚まし、タブーなく真摯に課題に取り組まなければならない。