FA商品を扱う販売店は各々が得意とする商品で顧客を作る。その顧客から新たなニーズが発生する。そのニーズに応えて当該商品を探して納入する。こうして商品の種類がふえ、ふえた商品で新たな顧客を作って販売の領域を広げる。この様な過程を得て成長してきた販売店は多い。FA商品を作るメーカーは想定したマーケット向けの商品を開発製作する。その商品を使用した顧客から新たな商品の依頼を受けて開発製作をする。メーカーは更に使い易い機能を加えてシリーズ化し需要をふやし成長する。更にメーカーはマーケット領域の拡大を目指し、マーケットが将来的に発展し必要になるだろうと思う商品の開発を行う。開発される商品はいずれ普及すると見込んで生産を開始する。当初は顧客数は少なく数量も少ない。増加のペースはスローであるが一年、二年が経つにつれて増加ペースは加速する。それが製造工場向けヒット商品の特徴であり、FAマーケットはそうして拡大してきた。しかし昨今のFAメーカー事情では量産品の話がまとまるか、一年先にかなりの量が売れるという保証がないと新規製作には踏みきらない。FA成長期ではこの商品はいづれ売れるという前提で生産形態は手組みラインで見切り発車をした。現在は採算ベースに乗せるための生産設備投資計画から始める。そのために確実に売れるという情報や保証がなければ生産設備投資の予算書を上申できない。組織や権限あるいは手続きがめんどうになっていて、試行錯誤でやるわけにはいかないのだ。したがって、なかなかヒット商品は出にくくなっている。既存のシリーズ品が多くなるのはその様な事情である。今は変化のはげしい時世である。材料、通信技術は進むし、ベンチャー的な製品が生まれたり、意外な製造現場もできる。そこ向けのアプリに必要なセンサーや機器部品も新たに作られるだろうが、FA市場特有のじわじわ広がるものであって、あっとと言う間に売れるものではない。だからこれらの商品は当初から採算に合う量産設備投資計画から始めるメーカーではなく、今後、離陸するベンチャー型のメーカーやFA業界以外あるいは海外からやってくるメーカーがその役割を担うかもしれない。これまでのFA販売店は得意な商品で顧客をふやし、FAメーカーが次々と発売する商品を積極的に拡販しマーケットを広げてきた。もし売上が高位横這いを続けているなら、前述したメーカー事情を考慮しなければならないだろう。それに販売店のもう一方にある顧客の事情もこれまでとはだいぶ違う。日本経済がデフレ基調に長く留っていたため建屋の拡張や設備の増設をせずに改造・改善・保全そしてリニューアルをくり返してきた製造現場は多い。しかし数年前からGDPは上向き出したせいで人手不足が表面化しているし、デジタル化や脱炭素化の圧力が製造現場にはかかっている。こうした圧力に対処するために生産形態を変えたり、技術部門を分化して専門化している。中小の工場でも積極的に対処しようとする製造現場はライン長クラスがKEYとなって現場革新を進めようとしている。これらの変革は案件を追っていっぱいいっぱいになっているFA販売員では気付かないものだ。
これまでのように訪問して会っている技術者が新しく発生する商品探しを依頼してくれる人であるとは限らないのである。FA販売店営業が成長軌道に乗せるには一方にいるメーカー事情をくみ取ると同時にもう一方にいる顧客の事情もよく聞き出せなくては令和を乗り切れなくなる。営業の最も重要な活動は顧客創造であるからそれを自然にまかせないのが令和の販売店営業なのだ。