10月17日から4日間、「CEATEC(シーテック)」が開催された。同展は1958年開催の「テレビ・ラジオパーツショー」が前身。その後、「エレクトロニックパーツショー」を経て、64年に「エレクトロニクスショー(エレショー)」に名称を変更し、国内最大、世界でも指折りのエレクトロニクスの総合展示会として開催されてきた。2000年にはいくつかの展示会と統合し「CEATEC JAPAN」となり、19年から現在の名称に至っている。
日本のエレクトロニクス業界の変遷とともに名称を変えてきたとも言え、ラジオ・テレビから家電、コンピュータ、携帯電話、情報通信、カーエレクトロニクスなどと融合しながら開催してきた。
2023年のCEATECは、大きく2つの変化があった。ひとつは大手電子部品メーカーのいくつかが出展しなかったことだ。電子部品メーカーにとって、CEATECでの新製品、新技術の披露が、新規顧客の開拓と従来からの顧客への自社の取り組みの現状をアピールする場となっていた。
しかし、それを避けた背景には、3年余りにわたる新型コロナの影響で、海外からの来場者がまだ大きく見込めないという判断があった可能性がある。リアル展示会の開催が復活し、来場者も徐々に増えつつあるが、海外からの来場者はまだ以前の状態には戻っていないからだ。
もうひとつは、部品を取り巻く環境と個客への訴求方法の変化だ。一つひとつの部品の果たす役割は依然重要であるが、ソリューションやソフトウェアの果たす役割が高まっている現在、展示会だけでは説明し、理解してもらえづらくなってきているとも言える。インターネットやセミナーの活用など、展示会以外の方法で訴求する時代になりつつあるようだ。
そして、もうひとつの変化は、学生や若い人を意識した製品や技術より会社を知ってもらう展示だ。
製造業やエレクトロニクス業界の魅力を紹介しながら、自社の特徴や良さを知ってもらう。その狙いはもちろん、買ってもらうことではなく将来の求人対策である。人手不足がますます深刻になる中で、
将来の研究開発や営業、生産などを担う若い人材が確保できないと企業の存亡を危うくする。
電気設備・工事などの団体である日本電設工業協会が主催で毎年開催している「JECA FAIR(電設工業展)」では数年前から、会場にリクルートコーナーを設け、業界の概要を紹介して魅力度アップに取り組んでいる。また、FA関係の展示会である「IIFES」では学生応援企画として、22年に「大学高専テクニカルアカデミー研究発表」や「業界研究セミナー」、「見学探訪ツアー・交流会」を開催し、将来の就職などに参考してもらう取り組みを実施している。「IIFES 2024」が1月31日から開催されるが、同様の企画が行われるものと思われる。いずれも展示会を通して業界への理解を深めてもらい、将来の人材確保を目指している。
人手不足対策として、ロボットの活用や自動化の推進などの対策があげられている。この件について後日改めて触れたいと思うが、人手不足の背景には少子化が大きく影響しており、この20年間で15歳~34歳の人口は1000万人以上も減少している。これだけ減少すると、魅力ある業界づくりをよほど進めて盛り上げていかないと、なかなか採用にはつながらないようになってくる。ブラック企業は自然淘汰されてくるかもしれない。円安基調で外国人労働者もなかなか日本に来てくれないことにもなってくる。
インフレ基調で製品価格の改定が進み、いまのところ増収増益の企業が増えているが、多少余裕のある今こそ魅力ある業界、魅力ある会社づくりに向けた施策が求められる。世界的に劣る生産性を高めながら付加価値を上げて、人材確保に向けた待遇改善を進めていくことが重要になっている。
製造業を支えているのは最終的に人であることを忘れてはいけない。
(ものづくり・Jp株式会社 オートメーション新聞 会長 藤井裕雄)