日本科学未来館の常設展示が約7年ぶりにリニューアルし、さっそく見に行ってきた。「ロボット」の展示エリアは、訪問前はロボットの最新技術がこれ見よがしに展示されていると思っていたが、実際は赤ちゃんの反応程度しかできないパートナーロボット「ケパラン」がメイン展示に鎮座していて困惑した。未来のまちを探索する体感型展示では、「ロボットってすごいでしょ!」というメッセージはなく、代わりに「ロボットと人の関係を考えさせられる仕掛けが随所にちりばめられ、予想以上に頭を使わされて面白い展示だった。また、「老い」をテーマにした展示では、超高齢化社会をテクノロジーや社会の仕組みで乗り越えることに主眼を起き、老化にともなう体の変化やそれを補う最新技術などが体験できた。老後の自分を体感し、自分も老いてからどうしようと考えるきっかけになった。
いずれの展示にも共通しているのは、「技術礼賛」ではなく「これからの技術と人とのかかわり方」を徹底的に考えさせる展示であること。単に先進的な技術を展示して「すごかった」「面白かった」と一時的な満足を得るのではなく、新しい技術や課題を体験させ、それと対峙したときに「自分の考え」を持つ準備を促す展示になっていた。来場者にリアルな未来を見せ、そのフィードバックを集めていけば課題解決の糸口だって見つけられるかもしれない。さらにそれを反映すれば展示も常に進化できる。来場者にも主催者側にもメリットのある展示になっていてとても感心した。
優れた先進技術を開発するのは必要だが、もっと大事なのはそれが「現場で使われるようになる」こと。新たな発見も進化も昔から開発者の頭の中だけではなく、実際に活用する人、ユーザーがいる現場から生まれてきた。日本のFA技術もそうして強さを獲得してきた。いま、デジタル技術を中心に「生産の効率化」を目指すインダストリー4.0の発展版として「インダストリー5.0」が提唱され始めている。インダストリー5.0のコンセプトは「人間中心」とされているが、それは長年、日本の製造業が現場で重視してきたこと。日本はもう一度原点に立ち返り、「人中心の技術開発」と、活用する人の意見を聞く耳を徹底的に磨きこむことで勝機が生まれてくる。5.0は日本の時代だ。