FAの販売員に営業は大変か、おもしろいかと問えばおもしろいという人が多い。彼等は営業活動を通して多くの商品の種類を知っているしFA営業には欠かせない電気に関する知識も身につけている。彼等が活動した平成時代は国内のFAマーケットは昭和期のように大きく伸びはしなかったが安定したマーケットであった。パイが大きくならなかったが故に商品競合切り換えキャンペーンがくり返されてきた。激しい競合の中で売上を確保しているという自負もあったし、商談も無いつらい営業活動ではなかったようだ。
この事を穿った角度で見ると「むずかしいFA営業に慣れてしまえば顧客との関係は維持できるし一定の売上も確保できるからおもしろいと聞える。確かにFA商品は種類は多く電気技術の知識も大変だ。納期撹乱や値上げラッシュ等の異常事態対処も決して楽ではない。それでも商品に絡む電気技術の素養を身につければ次々と発表される商品はそれほどむずかしくなく受け入れられるし、良好な関係にある顧客は新らたな商材をふやしてくれる。それに異常事態への対応は営業の常であり誠心誠意で向き合えば時間とともに収まる。また昭和時代のようなノルマ的厳しい売上管理はない。こうした営業の環境下での営業であるからFA営業は大変だという部類より何げなくおもしろい部類になっているのかもしれない。販売店という組織が安泰であるには成長して行かなければならない。成長するとは年々波を打ちながらトレンドは右肩上がりになることだ。10年前と比べてなぜ伸びたのか、なぜ横這いのような波を打っているのかを総括しなければならない。平成時代は確かにデフレ基調であったから売上が成長軌道に乗っていなくても、ある一定の利益が出ていれば良しとする販売店は多かった。しかし令和に入ってGDPは少しずつふえて今年度580兆円と予測されている。伸びたGDPに対応して設備投資は活発になっているはずだ。この恩恵にあづかれず売上トレンドが上昇してないとすれば他の販売店に上昇分を吸収された事になる。この時期に売上トレンドが上を向かない販売店は基本的に営業戦力、戦法が変っていない。ただただ一生懸命に動いているが平成からの営業を強化しているだけだと思った方がいい。歳を取ると他人の言うことを聞かずにがんこになると言われるが、がんことは歳を取って他人の言うことをますます聞かなくなることではない。
年寄りががんこになるのではなく、その人は若い頃からの行為をずっとやっているため、どんどん変っていく周囲の人から見ればかたくな(がんこ)に見えるのだ。そういう意味では平成のデフレ基調期からやってきた営業をただ強化し続けている販売店の営業はがんこなのである。だからと言って周囲を見て変えればいいというわけではない。昨今、周りを見て目につくのはデジタル化である。周りに合せて営業にデジタル機器を装備する。販売員管理をデジタル化する。リモート営業を導入する。各種の会議をリモートにする。等々を周囲の営業環境に合せれば営業が変ったと言えるかと言えばそうではない。販売店にとってがんこからの脱出は顧客に関することなのだ。顧客は注文・案件を出してくれるから大切な存在である。それが高じてしまうと売上に寄与してくれる人や組織にべったりとなり、その人や組織しか見えなくなる。しかしFA販売員にとって、顧客の一部である人や組織のみが、顧客ではなく顧客の全体が顧客だという理解に変えれば、がんこに続けている営業活動から脱出できるはずだ。