アドバンテックは10月26日と27日、台湾(台北)に構える同社・林口キャンパスにて、創業40周年を迎えるアドバンテックの「過去」「現在」の理解を深め「未来」を示すワールドパートナーカンファレンスを開催。北米、欧州、日本、韓国、アジアなど約60の国と地域から、共創パートナー約800人が集まった。その様子をレポートする。
■アドバンテックとカンファレンスについて
アドバンテックは1983年台湾で創業し、世界26カ国に展開する産業用PCのリーディングカンパニー。「インテリジェントプラネットの実現」を企業ビジョンとして掲げ、ビジネスパートナーと協力して、産業分野に特化したAI×IoTプラットフォームサービスを提供している。
産業用PC以外にも、組込用の各種モジュール、イーサネットスイッチ、プロトコルゲートウェイ、ディスプレイ、各種I/Oやセンサ等、標準品だけで2000種を超えるハードウェアのラインナップを揃え、各種カスタマイズにも対応。日本でも福岡県直方市に製造拠点を設け、一部モデルは最短10日納期に対応するなど、サービスも強化している。また、ハードウェアだけではなく、ソフトウェアやIoTプラットフォームも含めて提供し、幅広い業界にソリューションベンダーとして価値提供を行っている。
Advantech Industrial IoT World Partner Conferenceでは、アドバンテックの方針説明の他、業界をリードする先進企業・パートナー企業幹部による最新情報や事例の講演といった聴講形式のイベントを中心に行われた。最新ソリューションの展示、関係者同士の交流をはかるパーティなども開催され、「製造業」を中心にした産業向けIoT(IIoT)や生成AI、エッジコンピューティングの最新情報が共有され、多くの参加者が熱心かつ積極的に議論を重ねた。
日本からも装置メーカー、インテグレータ、専門商社など多くのパートナーが参加。グローバルかつ最新の情報に触れ、自社のビジネスにすぐに活かせる情報を持ち帰った。生成AIの急激な進化に伴いビジネス環境は今後加速度的に変化することが明白な状況のなか、本カンファレンスでは、その変化への適応に対して「アドバンテック”が”できること」「アドバンテック”と”できること」の方向性が示された。
「AIxIoT(AIとIoTの融合)」をテーマとした基調講演
カンファレンスは、産業用IoTに関する基調講演から幕を明けた。Linda Tsai氏(President of Industrial IoT)からは、AIxIoT(AIとIoTの融合)の趨勢について、「成長」「共創」「持続可能性」をキーワードに発表が行われ、アドバンテックが歩んできた40年の歴史と関連技術の紹介を通じ、近年の情報化・自動化に関連するキーワードの変遷が解説された。また、現在同社が提供している「自動化機器・ソリューション」「AIxIoTを加速するエッジコンピューティング」の概要とあわせ、「エッジ」をキーワードにした取組が発表された。
「スマートシティ」「製造業」「交通・流通」「健康・医療」「小売」などそれぞれの領域で活用されている同社製品や、パートナー企業の紹介もなされ、「生成AI」「インダストリー5.0(人を中心とした環境変化に対応できる持続可能な産業)」「カーボンニュートラル」といったAIxIoTの推進要因と、自社サービスのポートフォリオ、領域ごとに強みを持つパートナーが例示され、今後の方針も示された。さらに、アドバンテックが推進する「EdgeSync360」という概念に基づいた最適な機器・ソリューションの統合制御の全体像も発表され、エッジデバイスをそれぞれクラウドまでシームレスに接続する「EdgeLink」、効率的に管理する「DeviceOn」、リアルタイムに監視・制御する「WebAccess」、単一プラットフォームで管理する「EdgeHub2.0」などの全体像が、今後成長が見込まれる「FA」「機器間連携」といったIoT技術の適応用途と併せて共有された。また、サービスセンターや工場の新規開設計画も発表、2050年のNet Zero(温室効果ガス排出量が実質無い状態)を目指しての取組や、領域毎のパートナー戦略なども示され、次世代のAIxIoTに関する共創の方向性が明らかにされた。
基調講演は、参加者が「業界全体のトレンド」及び「アドバンテックがパートナーと共に歩む方向性」を理解し、「それぞれの参加者が持つ強み」と「アドバンテックが持つ強み」を、どの様にビジネスにつなげていくべきか具体的に考えられる時間となった。
アドバンテックが目指すAIxIoTの姿
■アドバンテックの次期戦略
アドバンテック創業者であるKC Liu氏は「AIxIoT+エッジコンピューティング」を核にした未来に向けた戦略が40年の歴史とあわせて発表され、エッジコンピューティング市場のこれからの進化の方向性と適用領域も例示された。2023年現在は個々の事例創出が中心となっているが、今後時間が経過するにつれ領域毎のソリューションが増え、5年から10年のうちにアーキテクチャとして統合され、汎用的に活用される未来を示した。
また、「The Trio of AIxIoT Co-Creation」というキーワードについても解説された。”Trio”は、同社が提供するクラウドプラットフォーム「WISE-PaaS」及びエッジソリューション「EdgeSync360」と、生成AIやパートナーが提供するエッジAIなどの「AI Fusion」の3つを示している。それらを融合し、アドバンテックの強みを活かしながら、パートナー企業と一緒に共創を強く推し進めていくことが共有された。
■共創によるビジョンの実現
カンファレンスでは、共創を実現するパートナー企業も多数登壇し、具体例を交えた発表が行われた。マイクロソフトからはアジア太平洋地域のインダストリアルソリューションエンジニアリングPMグループマネージャーCathy Yeh氏が登壇。同社が提供するプラットフォーム「Azure」と生成AIで先頭を走る Open AIの技術を組み合わせた「Azure Open AI」について「コンテンツ生成」「要約」「コード生成」「セマンテック検索(ユーザの意図などを理解して、関連性の高い情報を提供するための技術)」の4つの機能とそれぞれの事例を紹介。川崎重工業とのロボットを活用したスマートファクトリーの事例や、ロックウェルオートメーションとの会話型インターフェースの事例が紹介された。
NVIDIAからは、組み込み及びエッジコンピューティング領域の副社長兼統括マネージャーDeepu Talla氏による「エッジAIとロボティクス」についての講演、モベンシスからはCEOのRoi Pyong Pak氏による「AGV・AMRとロボット向けプラットフォーム」の紹介があった。また、ボストンコンサルティンググループ、Momenta Ventures、Orange Business、Raven ai、Integral System、Axiom Manufacturing Systemsなどのパートナーからも具体的な共創事例が共有され、アドバンテックが提供する製品・ソリューションとの連携による価値が広く示された。
スマートオートメーションソリューション
アドバンテックジャパンからも、執行役員インダストリアルIoT統括事業本部の古澤隆秋氏が、セクターマネージャーのTiger Yeh氏と共に登壇。設備総合効率(OEE)の管理、予知保全、エネルギーマネジメント、AI画像処理、MESなど、インダストリー4.0を実現するために注目されている各ソリューションについて実例を交えて解説をした。例えば装置メーカーにおける例では、同社製産業用PCと総合開発環境「CODESYS」を活用することで、30%の開発工数削減とダウンタイムを約15%削減できたことなどを紹介。同社のオープンエッジコントローラ「AMAX-5000シリーズ」が核となり、IT(情報技術)とOT(製造技術)両方の領域をシームレスにつなぐことで、「どのような機器がどの様につなげられたか」「入出力信号が基幹システムやクラウドまでどのようにつなげられるのか」そしてその結果実現できる「セキュリティ対策」「予知保全の効果」などをわかりやすく紹介した。