最近、設備の故障に直面し、予備品が不足した経験をしました。私は直接的にその問題に携わることはありませんでしたが、予備品の調査に一部関与しました。そこで今回は「予備品管理の難しさ」についての感じたことを共有したいと思います。
焦りの体験は、ある製造ラインで計装部品が壊れ、設備が停止した時のことです。
迅速な復旧が求められましたが、予備品管理ソフトを起動し、必要な部品を検索すると、社内には在庫がないことが判明しました。
製造ラインの停止期間は不透明で、製造部門全体で焦りと不安が漂っていました。
同僚と共に商社やECサイトで壊れた部品が入手可能か確認しましたが、在庫はどこにも見当たりませんでした。
最後に、設備メーカーに問い合わせた結果、幸運なことに予備品が1つあることがわかり、急いで送ってもらうことになりました。
約2日間の生産停止は発生しましたが、大規模な生産遅れには至らず、問題は回避されました。
このような予備品の重要性は、特にコロナ禍において部品の納期が長期化したことから、予備品の適切な管理が一段と重要視されていると思います。
予備品は故障やトラブルに備える不可欠な要素ですが、その保有量や種類をどう選定するかは経営者やエンジニア、保全担当者にとって難しい課題です。多くの予備品を備えることで故障時の対応がスムーズになりますが、大量の予備品保有はコストの増加を招くため、適正な在庫の判断が求められます。
実際、使われる機会がなく保管棚で眠っている古い予備品も存在します。また、今回の事例のように予備品を保有していない部品が故障することもあります。
「なんで予備品がないの?」なんて周囲から言われますと、全ての部品の予備を持ちたくなる気持ちになることもありますが、それは無理がありますし、実際には不可能です。
私が勤めている企業は大企業ではありませんが、予備品に関する4つのルールをご紹介したいと思います。少しでも参考になれば幸いです。
まず、予備品は数千点あり、比較的安価な予備品管理ソフトを使用しています。
1つ目、考え方として、使用実績やメンテナンス履歴から故障発生頻度や部品寿命を予測し、設備ごとに重要度を設け、リスクに応じた管理を行っています。また、故障の発生確率だけでなく、入手困難性や修理時間の影響も考慮して在庫を確保しています。
例えば、停止が許容できない設備は重要度が高く、基本的な対応方法として、耐用時間を定めておいて、故障していなくても交換する予防保全で対応しています。また、予備品も多く保管していたり、交換した部品を中古品になりますが、予備品として保管したりすることもあります。一方で、重要でない設備は予備品の数を少なくし、短納期の部品は持たないなどの対応を行っています。設備の中には壊れてから対応する事後保全のラインもあります。設備の重要度については、生産計画を立てている部署と相談し、決定しています。
2つ目は、計装関係の部品では、異なる設備でも同じ型式の部品を使用して共通化、パワーサプライなどは大容量のタイプを予備品とし、どこにでも一時的に使用できるようにすることで、予備品の数を減らす努力もしています。
3つ目は、同じ設備メーカーから同じ又は似たような仕様の設備を導入し、他のラインでも代替機として製品を製造できるようにしています。
4つ目は、多少コストがかかりますが、設備によってはメーカーと保守契約を結び、保守部品を確保していただいている設備もあります。
他にも細かなルールはありますが、このようにルールを定め、ソフトを使用して予備品管理を行っています。
しかし、今回のように予備品が不足して生産停止になることもあり、まだまだ課題は残っています。今後も戦略的かつ効果的な予備品管理の手法を模索し続ける必要があるかと思います。
最後になりますが、今回のコラムを書きながら、工場の予備品管理は故障対応の迅速さとコストの最適化のバランスを取るのは改めて難しい課題と感じました。
予備品が不足すると、どれだけ計画が立てられ、効率的に作業が進められても、生産の中断や遅延が発生します。その影響は企業にとって致命的となりかねません。
この難しさに対処するためには、データの分析やテクノロジーの活用、さらには柔軟な戦略の策定が必要です。
それにしても、予備品がない状況で部品が故障すると、とても焦りますね。
【著者プロフィール】
シマタケ
共働きの子育て会社員。工場で15年間働く電気エンジニア。現在は某製造メーカーの生産技術担当。エネルギー管理士、第3種電気主任技術者、第2種電気工事士
機械保全技能士電機系2級、工事担任者(現DD第1種)、2級ボイラー技士、消防設備士(乙6、7)、危険物取扱者(乙4)など多数の国家資格を取得。心理学を勉強中でメンタルケア心理士、行動心理士も取得。
「電気エンジニアのツボ」でブログとYoutubeで情報を発信中