2024年の年頭にあたり謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年は本格的にパンデミックからの回復を感じさせた年で、海を越えた人流も活発になり、経済活動もコロナ前の状況に戻ってきました。半導体を中心としたサプライチェーンの問題も緩和されてきましたが、部材価格の高止まりは継続し、円安や輸送コストの高騰、人手不足、賃上げなど、これからの日本経済の課題が明らかになってきていると思います。またカーボンニュートラルに加えPFAS(有機フッ素化合物の総称)規制など、環境面での対応も今後の企業活動でのチャレンジになります。
このような状況に対して、企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)によるさまざまな業務効率の改善を進めていますが、ここ数年はAI(人工知能)も身近な存在になり、生成AIなどをうまく利用することにより、これらの課題を解決して行く可能性も見えてきました。ただAIを活用するにしても、その元となるデータが正しいものである必要があり、開発、生産面においては、電気計測器がいかにクオリティーの高いデータを創出するかで、AI活用の範囲を広げていけるものと考えています。このようにカーボンニュートラルの実現や環境規制への対応も含め当工業会の果たすべき役割は重く、我々は社会が必要とする電気計測器をタイムリーに供給し、課題解決を加速させて行く必要があります。
当工業会を取り巻く社会状況を振り返り、将来展望を見通しますと、2022年度の海外拠点の売上を含む電気計測器の総売上高は9,463億円と、対前年度比で8.6%増となりました。プロセスオートメーションを支える機器の伸長、電力量計の伸び、「6G」次世代通信技術の開発などによる測定需要の増加に応えています。2023年度の売上は、前年比から横ばいを見込んでいます。しかしながら、2024年度以降は、電力計の取替需要および自動車・「6G」・カーボンニュートラル関連の投資増加要因と、生産コスト増の影響による減少要因があわさり、2023~2027年度の年平均成長率を+1.2%と見通しています。経済産業省をはじめ、関係省庁、関連団体の皆様へ、当工業会の活動にご支援いただき感謝しております。また、会員各社の皆様による不断の経営努力に感謝いたしますとともに、工業会の活動への多大なるご支援とご参画をいただき、厚く御礼申し上げます。
私は昨年5月に当工業会の会長を拝命いたしました。曽禰前会長が強力に推進されたDX化の流れを定着させること、さらに歴代会長が目指された工業会の価値向上を成し遂げることが使命であると考え、新しく3つの方針を設定しました。それらの活動の実態を概観いたします。
第1番目の、「DXからGXへ:脱炭素社会実現への貢献」については、会員企業がそれぞれGXに向けて具体的な取り組みを検討できるように情報を提供しています。経済産業省の進めるGXの取組み、およびIECに紐づく国際的な活動における製品カーボンフットプリントの講演会等を開催してまいりました。政府や社会の動向について核心的な情報を把握し、的確にカーボンニュートラル社会の実現に向けて貢献できるように、今後も環境づくりを進めてまいります。
第2番目の、「電気計測器業界の知名度向上」については、展示会事業検討準備タスクフォースで、展示会の課題解析はもとより、今後の展示会事業の在り方を検討しています。特に若い世代がジェンダーを問わず電気計測器業界に理解と興味を示し、さらにアカデミアの研究が産業界で利活用される為の情報発信の場を提供することをミッションに掲げて、2024年度の計測展OSAKAに向けて準備を進めております。また、部会活動においても次世代人財確保をテーマとした取り組みが開始されようとしております。
第3番目の、「すべての会員企業の満足度向上」に関連して、JEMIMA会員向け人材研修を重要な事業と位置付けて開催を継続し、研修受講者相互の人脈交流の拡大および内外関連団体との交流範囲の拡大へ展開を図ります。JEMIMA活動の源泉と位置付けています委員会活動の成果報告会では、内外機関からの各種有益な情報交換を新たに盛り込み、総合的な会員向け情報発信の場としての改革に取り組んでいます。政府機関などの有識者を招き、会員の経営に資する最新の政策情報を提供することを目的とする政策研究会セミナーも継続します。さらに、測定データの価値の在り方を検討する「データ利活用タスクフォース」、並びにビジネスモデルの変化に対応する「コト売りタスクフォース」は、何れも会員企業による具体的なユースケースのレベルで討議されており、たいへん有用な情報が獲得できる状態になっています。
2023年度前半では、すべての部会、委員会がこれらのJEMIMA方針に沿って活動していただきました。各会員企業の皆様が、自社の業務で忙しい中、JEMIMA活動の重要性を理解され、いろいろな議論や提案を積極的に行っていただいていることを大変嬉しく思っております。新年からの今年度後半では、それぞれの活動が企業活動にとって有益な成果に結びつくことを期待しています。
最後になりましたが、年初にあたり、日頃より当工業会の事業運営にご協力いただいております各会員企業の皆様に改めて深く感謝するとともに、本年もなお一層のご支援とご鞭撻を賜りますようにお願いを申し上げて、新年のご挨拶とさせていただきます。