令和の販売員心得 黒川想介 (106)商談テーマにとらわれたら営業の「革新活動」が必要に

歴史上で戦国時代の終了は為政者が他者から奪い取る土地がなくなってしまったことを意味している。この時代の土地とは為政者にとって利益の唯一の源泉であるといってもいい資本であった。一所懸命という言葉ができたように土地持ちの者は命を懸けて土地を守ってきた。したがって武将達は合戦の恩賞に土地を貰うことが最高のモチベーションになっていた。与える土地がなくなって配下の武将達の上昇志向のエネルギーをどうするかが為政者の最大の課題になってしまった。秀吉はその課題を大陸に求めて唐入りと称して中国の名王朝を攻めるため朝鮮半島へ侵略した。

次の徳川政権は武将達に土地から目を背けさせた。つまり、立身出世のエネルギーを兵学の武から儒教、学を根本とする上への忠義や体制を支える思想や論理に変えて浸透を計った。現代にいる我々は歴史上に起きていることをそういうものかと学習しているが、これは戦略の大転換であって、ものすごいエネルギーを使いながらも定着させるのに三代将軍家光の時代あたりまでかかっている。営業に於てもこれに類する大転換は一生に一度あるかどうかわからないが少なくとも変えていかなければならない営業の活動はあるだろう。『売上は販売員の薬だ』と昔はよく言われた。今でも販売員が口に出して営業はおもしろいと言っている時や何となく明るい雰囲気を醸し出している時は売上が好調の時である。したがって営業にとってもモチベーションは売上である。しかしながら毎日一所懸命、動き廻っているのに忙しいばかりで月々の売上にさしたる変化がなければ明るい気持を持てないし奮い立つようなこともない。

この様な状況では次なる高みを望もうとは思わないものである。高みを望まないようでは成長しない。だから月々の売上や年々の売上にさしたる変化のない時は赤信号でなくとも黄色の信号と感じてエネルギーを要する営業変革が必要と考えて方がいい。変革とは戦略の転換である。前回述べたように戦略的思考は期間売上を避けるため現状の営業活動を強化することではなく2~3年先の成長のために有効かという問いに答えることである。例えばどの販売店も重要であると位置づける商談テーマ進捗活動がある。今やっているこの活動は成長のため有効か、テーマの進捗をきびしく管理強化すれば成長するのか、いっそうやめたらどのような支障が出るのか考えてみる。そもそも現在のようなテーマ管理はパソコンの出現から始まった。パソコンは商談テーマを把握する手段としてまことに便利なものになった。パソコン出現以前でも売上の管理には商談テーマは重要なものだった。上司からネタ(情報)はないかと言われて、口頭又は書面で報告をしていた。だから報告していた商談情報はかなりトピックス的なものであった。この様な商談情報を何とか売上に結び付けて期間の売上目標に一歩でも近づけるのがネタ(情報)管理であった。パソコンによる商談テーマ進捗管理が容易になるとテーマ件数や金額が気になり出す。テーマ件数が少ないから売上が上らないのではないかと思うようになり、テーマアップ強化を計る。当初は売上目標と、テーマアップはリンクして考えられていてもテーマへのこだわりが高じればテーマアップこそモチベーションになってしまう。つまりテーマが少ないから目標に行かないという強迫観念に恐われ、強化すれば些細なテーマでも打ち込むようになる。もしそうなら商談テーマ有り方を含めた営業の革新活動が必要だ。その変革エネルギーは相当なものだろう。

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