幣紙で連載中の高木俊郎氏による「日本の製造業の再起動に向けて」では、当初から一貫して「日本の製造業よ、茹でガエルになるな」という警告を発してくれている。茹でガエルとは、鍋のなかのカエルは常温からゆっくりと加熱していくと温度変化に気づかずにそのまま死んでしまうという説話に基づき、緩やかな環境変化には気づきにくく、気づいた時には大きな被害を受ける、そうならないためにも周囲環境には気を配っておけという比喩表現としてよく使われる。茹でガエルは日本人が陥りがちなパターンとしても知られている。
この茹でカエル、最近は別のものに変化しているように感じる。昔は情報収集の手段が限られいていたため、自分から気づかなければ茹でガエルになってしまっていた。それが最近はインターネットやSNSで大量の情報に囲まれる時代になり、嫌でも環境や時代の変化を突きつけられることが増えてきた。しかし、それに直面してもただ騒ぐだけで、対策のための行動をしなかったり、どこか他人事として捉えたり、他責したりして、結果として茹でガエルになるケースが散見する。無意識だった昔よりもタチが悪く、残念な茹でガエルに進化を遂げている。
変化点や危機感から課題を見つけ、解決に向けて行動を起こす。これこそが最良の選択肢であり、評価されるべき動きだ。どんなに素晴らしい気づきや考えであっても、それを改善する行動に至らなければ机上の空論に過ぎない。もう何年も前から日本の製造業、FA業界が危機を迎えているのは誰もが知るところ。茹であがるには十分な温度まで上がっている。このまま茹で上がるかどうかは、私たちの意思一つ。残念な茹でカエルになることだけは真っ平御免だ。