世の中がどんどんと変わっていく中で、製造業にも大きな変化の波が訪れています。そしてその変化に対応するための投資を判断する必要が出てきます。
そういった局面で、新しい設備を導入すれば生産性を上げられるということで、設備投資に積極的な会社は多いです。もちろん設備投資は重要で、今にも壊れそうな機械で作業を続けていては品質にも安全にも不安が募ります。あるいは最新の加工技術を発揮するためには新しい設備でなければできないということもあるでしょう。しかし設備投資を決める前に、是非とも考えて戴きたいもう一つの判断基準があります。
当たり前のことを言いますが、設備というものは、その性能を完全に使いこなして、かつチューンナップできる能力があって初めてその本当の効果を発揮できるといえます。単に設備を動かしている程度であれば、部分的な生産スピードが上がるだけで投資効果は低いのではないでしょうか。設備を使いこなしていない場合は、その設備からいかにして最大限の効率を引き出すかということに目を向けて、それができる社員を育成するべきではないかと考えます。すなわち設備の能力を最大限に引き出すことができる社員の育成への投資を優先するということです。
先日、指導先の会社で、昔塗装で使っていたのですが、塗装工程が不要になって放置されていた古いロボットを分解掃除して再稼働できるようにして、新しいプログラミングと治具の作成を行って組み立ての自動化をできるようにした若い人がいました。私は彼を育てた会社とその彼に心よりの敬意を表します。日本のモノづくりを支える人材を育てた!と思います。
そもそも社員は会社における最高の資産です。設備を動かし、設備の能力アップをはかれるのも社員です。社員が新しい商品をつくり、売り上げもつくり出します。
社員への投資は、教育という時間が必要ですが、ノーリスクハイリターンの最高の投資であるのです。
日本カイゼンプロジェクト 会長 柿内幸夫
1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011〜2016)、静岡大学客員教授 著書「カイゼン4.0 – スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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