物量は何にも勝る。戦いに勝利するには、まず相手よりも人や資源などの物量を多く確保し、有利な状況を作り出すことが重要だ。どれだけ優秀で訓練された兵隊でも、圧倒的な物量には敵わない。いまは生産性や効率を重視する世の中になっているが、競争社会の中では物量がモノを言うことは忘れてはいけない。
製造業を含む日本経済は失われた30年とよく言われる。その要因のひとつとなったのは物量競争に敗れたことだ。かつて日本は半導体や電子機器を安く大量に作る物量で世界市場を席巻したが、この30年は同じ手法で中国や韓国などにしてやられた。物量で相手を押し潰すのはサステナブルでもエコでもない。単品を見れば品質や価値も低いかもしれない。ましてやスマートでもない。ただ、広く普及して安くいつでもどこでも手に入れられる安心感と信頼感は何にも勝る立派な価値。物量は正義なのだ。
日本の製造業の将来を考える上で、労働人口は重要だ。いま製造業で働いている人は1055万人いるが、これから少子化の影響でどんどんと減っていくだろう。人が減れば今まで通りものが作れなくなり、結果、競争力は落ちる。労働人口も物量のひとつなのだ。だからこそ今やるべきことは、若い人が製造業に入ってくる環境の整備と、少ない人数でも今と変わらず作れる自動化による生産力の強化。いま個社でそれを進めているが、一社でやるには限界がある。今こそ製造業、ものづくり業界が一丸となって、物量を強化できる取り組まないといけない。