仕事を評価する方法はいろいろありますが、その多くは生産性や品質を基準とした結果指標なのではないでしょうか。もちろんこのような指標を見ながら改善を行って競争力を付けていく活動はとても大切です。しかしこれらの活動はとても管理的です。
管理という方法は生産性や品質においてはとても有効ですが、人間を相手にする場合には限界があります。私たち人間は機械と違って意思や自発性があります。ですから作業が楽で仕事が楽しく、その人が幸せかどうかを評価する指標が必要だと思います。従業員それぞれに課題が与えられていて、それぞれに頑張れる環境があり、そして結果が出たらが必ずほめられ、難しかったら助けてもらえる体制が欲しいものです。
皆が助け合い意欲的に改善を進めれば、会社は自然と進歩向上します。効率の追求と幸せの追求。前者に偏りがちな会社が多いのですが、人は自らの幸せのために自発的に動き出した時、驚くほど大きな力を発揮するものです。
私は自分の改善指導の中で、現場で皆が改善を実行して、実行して下されば効果の大小を問わずすべての人がほめられてご褒美をもらうというやり方をしています。このやり方にチョコ案という名前を付けました。何を改善しなさいということではなく、皆さんが自分で考えてできることをどんどん実行して、その結果を簡単に書いて報告するものです。改善の内容は独自でユニークなモノである必要はなく、ほかの人がやった良い改善をマネしてもいいし、工場内の不具合の修繕でもいいし、何でもありです。一人月一件以上という以外の目標は設定していないのですが、品質も生産性も在庫もものすごく向上します。
欧米でも同じようなことが話題になっていて、「ティール組織」という本が出ています。これまでのビジネススクールで習うような、戦略に従って目標を設定してそれをトップダウンで指示して実行するやり方だと、人はそれぞれ頑張るけれど委縮しがちであるし自発的な助け合いは起きないが、それらが無い組織だと人はのびのびと力を発揮して助け合いも生じるという新しい仕事のやり方の発見の報告といった感じの本でした。
人が思いっきり実力を発揮し、助け合いがある、楽しく幸せな仕事のやり方を追求することもこれからのテーマだと思います。
日本カイゼンプロジェクト 会長 柿内幸夫
1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011〜2016)、静岡大学客員教授 著書「カイゼン4.0 – スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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