富士経済はサービスロボットの世界市場を調査し、ロボットの高機能化と導入環境の整備が進んでこれからサービスロボットの社会実装は一層活発化し、市場規模も2030年には4兆7100億円に達すると予測している。
サービスロボットの世界市場は、2023年に2兆円を突破。世界共通の課題となっている労働者不足と人件費の高騰から、サービスロボットを活用した自動化・省人化ニーズが増加している。ロボットの高機能化で対応業務が広がったこと、アプリケーションによっては費用対効果が明確になってきており、ユーザーや施設側でも導入しやすい環境構築が進んだことで普及が加速している。
配膳ロボット急拡大が目立つサービス分野
サービス分野は、人手不足が深刻化していることから拡大し、特に外食産業で調理ロボットや配膳・下げ膳ロボット、米飯盛り付けロボット、寿司ロボットなどの導入が急激に増加。特に人件費が高い先進国で導入が先行しており、今後も市場拡大が予想される。
なかでも配膳・下げ膳ロボットは、コロナ禍の非接触ニーズの高まりを背景に世界各国で導入が進み、2023年は小売、工場など飲食店以外での導入が進んだ。日本市場でも高い需要に対し供給が進み、2024年以降も人手不足や人件費高騰への対策としてフタ桁成長が期待される。
レーザーやセンサー、LiDARなどを活用し、物品を載せて目的地まで自走するデリバリーロボットのうち、屋内・施設内用はコロナ禍による非接触ニーズの高まりを背景に急拡大した。中国メーカーが宿泊施設を中心に導入を広げ、市場をけん引。施設内用はエレベーター連携が不可欠となっており、2023年は世界的なエレベーターメーカーと提携するメーカーも出てきた。日本ではエレベーター連携コストが高いことが導入障壁となっており、市場規模はまだ小さいが、2023年は病院への大型導入がみられた。連携コストの低下も徐々に進んでいるため、今後の市場拡大が期待される。
床を清掃するロボットなど業務用清掃ロボットは、清掃業の人手不足や賃上げに対するコスト圧力、持続可能な清掃サービスの提供などを背景に急拡大。近年は人手不足に対する危機感から需要が増加しており、2023年の市場は二桁増となった。以降も、人手不足や人件費高騰を背景とした需要は高水準を維持するとみられ、市場拡大が予想される。 日本では500平方メートルから1000平方メートル程度の施設に対応した小・中型製品がトレンドになりつつある。導入は2019年以降増加しており、ライフサイクルは5年程度であるため2024年以降は更新需要も想定されている。
手術支援や介護、アシストスーツなどのメディカル分野
各分野別では、メディカル分野は単価の高い手術支援ロボットが9割強を占める。保険適用となる手術や参入企業の増加にともなって拡大し、熟練医師不足の解消、医師の偏在対策、医療レベルの標準化を背景に引き続き伸長するとみられている。
介護向けロボットは、多くが超高齢化社会となった日本がけん引している。導入に抵抗を感じる介護従事者は一定数あるが、従事者不足や負担軽減を背景に需要が増加。今後は日本だけでなく、高齢化が進む中国や韓国などのアジアを中心に市場拡大が期待される。特に中国は高齢者人口が日本より多く、潜在的なポテンシャルが高い。
パワーアシスト・増幅スーツは、医療や介護の現場だけでなく、様々な産業領域で導入が進んでいる。安価なアシストスーツも発売されて導入しやすくなっており、製品認知度の向上とともに拡大していくと見られている。また労働環境の改善や従事者の負担軽減ニーズが欧州や北米、アジアでも高まっており、海外市場の拡大が期待される。
ドローン等の活用が進む建設土木、農業等の現場作業
現場作業分野は、導入が進んでいるドローン・無人ヘリやAGVが8割強を占めている。建設業、土木業、物流業、製造業、農業などでは高齢化や人手不足、属人化などへの対策として需要が高まっている。特に、中国や欧米などロボットを導入しやすい環境が整っている地域を中心に今後も高い成長率を維持すると予想されている。
レーザーやセンサー、LiDARなどを活用し、物品を載せて目的地まで自走するロボット屋外でデリバリーロボットのうち、屋外用はECの増加や物流業の人手不足を背景に需要が高まっている。2023年は主要メーカーとフードデリバリーサービス事業者や物流会社との提携が進み、先行する米国や中国をはじめとした海外でロボットデリバリーサービスが本格化し需要が高まった。今後もECの増加や物流業での人手不足、ロボットデリバリーサービスエリアの広がりを背景に市場拡大が予想される。
日本では試験的なサービスが進められているものの、公道走行の条件を満たす製品や収益を確保できるロボットデリバリーサービスを展開する事業者は限定的なため、当面は緩やかな市場成長になるとみられる。
ドローンや無人ヘリは、市場は中国のDJIがけん引しており、圧倒的なシェアを誇っている。空撮用途の製品が市場の多くを占めているが、自動化や危険な場所での作業代替、業務の効率化など用途は広がっている。2023年は特に危険区域の点検や自然災害による被害状況の記録など、点検・測量用途が伸びた。広大な土地での農薬散布を効率化するための活用も多い。
日本では点検・測量用途以外に、防衛や警備用途の需要も高まっている。上空からの人の追跡や異常検知、火災現場の消火活動などにも活用されており、用途の広がりに伴って市場も拡大すると予想される。
同調査では、メディカル分野6品目、サービス分野10品目、現場作業分野9品目のサービスロボットと、注目サービスロボット関連ソリューション1品目の市場分析に加え、新たに各種サービスロボット×有望アプリケーション別(11業種)の市場分析、サービスロボットの多機能化を実現する周辺機器・設備やシステムとの連携動向をまとめている。