個人的な話で恐縮だが、4月に引越しをして生活の拠点を地方都市に移した。まだ生活してみてわずか数日だが、東京や横浜といった都市部とは色々と勝手が違い、それに戸惑いつつ、楽しんでいたりする。
例えば交通手段。都内だと電車がメインだが、こちらはクルマ社会。自家用車での移動が当たり前だ。走っている車の9割以上は国産車。外車はほとんど見かけない。また電車や駅での光景も全然違う。都内だと混雑緩和のためリュックを前に抱えて乗り降りし、学生など若い人はそれが当たり前のファッションになっていたりするが、こちらでは皆が背負っている。店舗での支払いについても、こちらでもキャッシュレス決済が普及しているが、レジ横にはPayPayや楽天Payなど特定の決済手段しか掲示されてないことも多く、一覧での掲示は少なめだ。おかげで毎回、「〇〇使えますか?」と聞いたり、どこでも使えるクレジットカード決済で済ませることが増えた。万が一に備えて手持ちの現金を用意しておくことになったのも大きな変化だ。
今まで都内という木を見て、日本全体という森を知った気でいた。しかしそれは間違っていた。それぞれの木だって種類や特徴が異なるのと同様に、それぞれの地域によって特性はさまざまだ。だからこそ個々の木々を、その現場に行って見て、感じることが大切で、改めて三現主義の重要性を感じている。
いま工場やプラント、生産ラインや製造装置に対し、デジタルツインによるシミュレーションや遠隔監視、リモート操作などができるようになっている。確かにこれらは人手不足への対策、業務効率化には有効で、これをやらない手はない。しかしその一方で、それを過信しすぎてもいけない。現場に行かなければ分からない、現場に行ったから感じること、見えることは必ずある。デジタル技術でどんなに忠実に現場を再現していても現場のすべてのデータを取れているわけではないのだ。小さな違いの積み重ねが後に大きな違いやズレにつながっていく。それを防ぐためにも三現主義とデジタル活用の両立が重要なのだ。その割合をどうするか見極めて判断するのは人の役割であり、そこが腕の見せ所。本当のデジタル人材にはリアルを感じる力も不可欠であり、現場が大事なのだ。