FA販売店はFA機器や部品を扱い、FAメーカーとFA機器部品ユーザーの間に立って売買の仲介を生業にする。戦略なくして成長なしと言われる通り各販売店は戦略を立て行動しているが商材とマーケットが同じであるため戦略も似てくる。
各販売店が平成年間にやってきた販売戦略は顧客の深耕りによる売上拡大である。この戦略の販売戦術レベルの行動は新しく発売される新商品紹介兼売り込み営業、競合商品の置き換え営業、案件を逃さず取り込むためのテクニカルスキルの向上、そして上記の活動から発生する商談テーマの進捗管理活動である。以上の事象がおおよそのFA販売店が基本的に実施している戦略戦術活動である。国内のFA市場は高度成長を経て安定期に入って20年以上経つ。令和に入って国の内外の事情はこれまでとは大きく様変わりしている。少し後れてFA営業が糧とする製造業にも大きな影響を及ぼしてくる。平成年間も世間の諸事情は国内の製造業に影響を及ぼしてきたがFA販売店は販売戦略を変えることなく販売戦術レベルを手直して予定売上を確保した。そのために顧客の深耕りによる売上拡大という戦略を良しとして維持する販売店は多い。
令和年間では国の内外の諸事情が製造業に及ぼしてくる影響は販売戦略の手直しや変更を余儀なくするはずである。FAのマーケットは他業界と比べてもかなり良いマーケットである。それなら何も戦略を変えなくとも販売戦術を事情に合せて変えればいいのではと考えがちになる。しかし、販売店が帳尻り合せに走ることなく持続的成長を望むなら戦略の手直しや変更は必要なのだ。軍事上の戦略を立てる時に幾つかの原則がある。その中の一つに「相手にまどわされずに自分の土俵を作って戦え」という原則がある。ここで「自分の土俵とは何か」と先に考えてしまうと自社の強みや弱みの分析から入る事になる。一般的にFA営業の主な強みは勝ち進む原動力となっている電気制御のテクニカルスキルであり、扱う商材で広範囲なオートメーションマーケットをカバーできる事、あるいはメーカーからの支援などが挙げられるだろう。弱みは顧客の固定化や新規客開拓力の弱さなどが挙げられる。しかしこの様な現状分析では販売戦術レベルの強化にとどまり戦略レベルは何もいじらない。
つまり自分の土俵とは既にイメージしているFAマーケットということであるから現在のマーケットで戦う販売戦術をどのようにするかとなってしまう。そこで「自分の土俵」ではなく「自分土俵を作って」という点まで考える。これまでイメージしてきたFAマーケットではなく、それなら改めてFAマーケットを見てみようとなる。FA販売店のマーケットはFAであることには違いないが扱う商材は多岐に渡る。ということは顧客の業態は様々であり、顧客自体にも様々な業態があるということなのだ。FAは元々オートメーションという広い概念のマーケットから始まり工場向けオートメや業務運営のための業務向けオートメや家電のような消費材向けオートメに分化してきた。
それぞれの分野のオートメのマーケットは更に分化したり競合したりしてマーケットが形成される。それらのマーケット規模は様々である。工場向けのオートメマーケットも既にひとくくりではない。更に分化、統合するマーケットが形成される。だから「自分の土俵を作って」とは得意な商材をもってマーケットを作ることではない。マーケットの実態をよく観察して自社に合った商材を見つけ、それらの商材を使ったマーケットを作っていくことなのだ。