現在、世界屈指のモノづくり企業も、昔からずっと強かったというわけではありません。創業期にはわずか数名の従業員でスタートしたのが、地道なモノづくりと改善の積み重ねで徐々に力を付けて、今日に至った企業が大半です。
私たちの身の回りには、実に様々な製品がありますが、たった十年前にすらなかったモノもたくさんあります。200年前にさかのぼれば、鉄道も自動車も電話もコンクリートのビルもありません。これらすべてはモノづくりの地道な努力の結果といえるものです。
今現在、とても強い企業であっても、それに安心して努力を怠ればすぐにライバル企業が追い付いてきて、そして追い抜かれてしまいます。あるいはその間に登場して今はもうなくなっているモノもたくさんあります。映写用フィルム、カセットテープ、そしてマイナーなところではオーバーヘッドプロジェクター(OHPと呼んでいました。私がコンサルタントになった30年前はこれが大活躍、パソコンにプロジェクターをつないで画像を映写する今では何のことか分からない方も多いことでしょう)、などなど懐かしい記憶が呼び起されます。これほど世の中は変わり続けているということです。
そしてこれからも、これまでに無かった技術を育て、喜ばれる製品やサービスを生み出すために日々、改善を続けることこそが、モノづくり企業の使命です。世の中は常に変化し続けるものなのですから、改善にも終わりはありません。
約2年間に渡り、製造業における改善について、『儲かるメーカー 改善の急所101項』というタイトルで私が経験して考えてきたことをお伝えして参りましたが、今回の連載が101回目で最終回となります。日本の製造業は以前に比べて元気がないと言われていますし、確かにそういう事実は存在します。しかし皆で改善をしっかりやっている会社の現場に伺うと、そういう一般論とは全く違う、元気で素晴らしいレベルの仕事が行われているのです。これまでお話ししてきました皆で行う全体最適の改善は日本のお家芸だと思います。そしてこれからの時代に求められる経営を実現する原動力になることを私は確信しています。どうぞ皆で改善を実行して大いに躍進して業績を伸ばしてください。いつも応援しています!
最後に、私がモノづくり改善の信条にしている「改善の心」をお伝えいたします。
「改善の心」
一、 固定観念はすべて捨てよ。
二、 すぐにやれ、言い訳は無用。
三、 金で逃げるな、チエで勝て。
四、 真因をつぶせ、ナゼ5回。
五、 改善に終わりなし、今が最低と思え。
日本カイゼンプロジェクト 会長 柿内幸夫
1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011〜2016)、静岡大学客員教授 著書「カイゼン4.0 – スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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