令和の販売員心得 黒川想介 (117)ユーザーから直接情報を得て利に貢献し販売店も成長する

販売店営業が言う課題解決やお困りごと解決のなかで多いのは「商品探し」である。「だいぶ前に製造中止になっていた」「仕様変更のため寸法や性能が合わなくなった」「納期問題が発生した」等々の理由でその要求にあった製品の探索依頼が顧客から飛び込んでくると懸命に探す。無理な依頼でも嫌われたら困る。点数を稼ごうと思うから労力は惜しまない。昔からよく言われる「お客様は神様です」。昨今では「顧客満足の充足」のように顧客あっての売上であるから顧客を大事にするのは当然である。
販売店はメーカーと顧客の間に立って売買仲介するのが生業である。したがって顧客が大手なら仕入れ先のメーカーも大事である。販売店は双方に「いい顔」を見せなければならない立ち位置にいる。建前はメーカーと顧客の真ん中の位置なのだが、時代によってどちらかに比重をかけてきた。
FAマーケットの草創期では、販売店は顧客側に立ってメーカーに対しては物申す的な立場をとっていた。顧客を握っているのは販売店であるという自負を持っていたからである。
成長期に入るとメーカーの作る商品の力が顧客を開拓した。次々に発売される新しい機能を持った商品がFAマーケットを拡大するようになった。この時点で販売店はメーカー側に立った。顧客サービスに力をいれるよりは商品売り込み姿勢が強かった。メーカーは神様ですとは言わないまでも、メーカーにそっぽを向かれたら大変だという風潮であった。
FAマーケットの高成長から安定期に入ると、メーカー同士の競争は激しくなった。メーカーは販売チャネル網の組織化に動いて、一次契約店と取引のある販売店を二次契約店として強化を図った。メーカー間や販売店間の価格競合が激しかった大競争時代も後半に入ると、メーカーは商品構成の関係やマーケットシェアの位置の確保のため販売チャネル網の再編を行った。FAメーカーの政策は結果的に一次契約店の数を絞ることになったので、契約販売店の立ち位置を顧客寄りにするきっかけになった。
しかし販売店はFAマーケットの成長期にメーカーと一体となって顧客開拓をし、安定期にはメーカーの大競争に巻き込まれ競合商品の切り替え活動に汗をかいてきたのだ。メーカー寄りの状況から顧客寄りに比重を移そうとしてもそれほど簡単なことではなく、従来の流れにまかせてきた。
それでも国内デフレ経済状況であったから、売上は思うように伸びなくても給与・経費も伸びなかったので販売店はまあまあ元気に凌いでこられた。それほどに安定した良いマーケットに恵まれていたことになる。しかし昨年から少し状況は変わってきた。デフレを脱し、ややインフレ気味に推移し出した。初任給は伸び、経費も伸び始めている。そうしたことを考慮すればメーカーの値上げ分の見かけ売上が上がるくらいでは凌げなくなる。だから販売店はメーカー政策と付き合いながら成長軌道に舵を切る必要がある。
販売店の成長のもとはやはり顧客にある。顧客の内部にはさまざまなマーケットを持っている。現在の販売員は顧客第一の旗を掲げてサービスの徹底や技術スキルを上げて課題解決をし、十分に顧客よりになっていると思っているようだが、これではどの業界でもやっている当たり前の売買仲介業である。
顧客側に思いっきり比重をシフトするというのは、ユーザー側から見た一次店になることなのだ。メーカーの一次店とは「ものの流れを見た時のこと」で、ユーザーの一次店とは「情報の流れを見た時のこと」だ。したがってユーザーの一次店とは購買代行のことではない。ユーザーから直接情報を取れる位置にいるのだから、ユーザーをよく知り、ユーザーの利に貢献して同時に販売店も成長することなのだ。

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