デジタル化の不可欠なインフラに人手不足・自動化が後押し
製造現場のみならず社会の自動化・デジタル化の進展によって急拡大を続ける産業ネットワーク市場。なかでも無線・ワイヤレス技術は、以前は採用が限定的だったが、IoT・デジタル化のトレンド以後はセンサ設置範囲と数の増加、遠隔監視・制御用途の拡大、ロボットやAGV・AMRなどモバイル機器の普及によって導入が広がり、今後もさらに伸びていくと見られている。
ワイヤレスIoT市場見通し 画像や位置情報ソリューションが市場牽引
矢野経済研究所の調査によると、近年は無線通信の信頼性、利便性、柔軟性が向上し、さらに通信やデバイスコストが低価格化・多様化したことを背景に、ワイヤレス方式のIoTシステムが増加傾向にある。
足下の市場の動きでは、コロナ禍の影響を受けた2020年度から2023年度もおおむね好調を持続し、2023年度のワイヤレスIoT市場規模は前年度比20.3%増の2912万デバイスを見込み、2024年度には8.7%増の3165万デバイスと予測している。コロナ禍で保留や延期されていた案件が回復し、PoCから実装に入る動きも見られた。
通信規格別では、セルラーネットワーク/セルラー系LPWAが2200万デバイス(構成比75.5%)と全体の7割を超えており、次いで電力スマートメーター向けが主体のWi-SUNが632万(21.7%)、その他920MHz帯LPWAが80万(2.7%)と続く。Wi-SUNが電力スマートメーターへの導入が進んだことで伸び率が鈍化したが、セルラー系LPWAを含むセルラーネットワークは伸びを続けており、市場拡大を牽引している。
2030年度に向けた今後の見通しについては、コネクテッドカーなど自動車関連や、スマートメーターソリューションなどエネルギー関連、物流倉庫や製造業、建設業、介護施設での見守りなど位置情報系IoTシステムの普及拡大が市場をさらに押し広げると予想。さらに2025年度以降は通信キャリアの3Gサービスが停止することから、従来の3G・4Gのセルラーネットワークが縮小し、5Gまたは別の通信方式への置き換え需要が発生すると見込まれている。
また今後の注目トピックとして、高帯域Wi-Fi市場の拡大を挙げている。Wi-Fi規格は2.4GHz帯から5GHz帯へと高帯域化して高速化しており、Wi-Fi 6Eからは6GHz帯も対象となっている。
ターゲット市場は製造業や建設業、物流倉庫などが中心となり、製造業では、PLCや産業用ロボットも含む生産設備・機器からのデータ収集や工具類の位置情報管理、ネットワークカメラの画像データ収集、AGVの運行管理/自動運転、各種センサ類からのデータ収集などでの採用を見込み、建設業では作業員や作業ロボット、重機・建機/部材の位置情報、危険位置アラート、監視カメラのデータ収集、作業員のバイタルデータ収集、作業現場の環境データの収集、重機・建機の遠隔操作など。物流倉庫では、在庫品の位置情報や、フォークリフト等物流機器の運行管理、ネットワークカメラの画像データ収集、AGVの運行管理/自動運転、作業員のバイタルデータ収集、倉庫の温湿度情報、物品の位置情報、輸送中の温度管理などがターゲットになるとしている。