矢野経済研究所の調査によると、特定範囲内で構築する5Gネットワークのローカル5G市場は黎明期から導入期にあり、本格的な普及は、通信キャリアの3Gサービス終了にともなう5Gへの置き換えが発生する2025年度以降を予測している。
市場の現状としては、先行するITベンダーによる自社グループ内の工場や事業所、自動車メーカーに代表される先進的なユーザ企業による実装・PoC案件が中心で、まだ黎明期にある。2022年度から導入検討やPoCが進み、実装に向けたプロジェクトも増えてきているが、2023年11月末段階でローカル5Gの免許人は152者(公表を承諾している事業者のみ)。これをもとにした現在のローカル5Gソリューションの市場規模は事業者売上高ベースで217.2%の63億円にとどまっている。
本格的な普及は、既存の通信規格を使ったIoTシステムの更新タイミングになると見られており、通信キャリアによる3Gサービス終了となる2025年度以降に置き換え需要が進んでいく見通し。代替需要はセルラー5Gベースが主導するが、ローカル5Gも同時並行で普及が進み、ユーザーの用途や目的、予算感などに合わせた使い分けが進むと見られている。特にローカル5Gでは、リアルタイム対応/遠隔モニタリング、最適化、意思決定支援、自動化・自動制御、データを基にした予知・予測・予防、価値向上等のテーマに紐づくものがターゲットになると予想している。
また注目トピックとして「プライベート5G(共有型5G)」を挙げ、導入ハードルの高いローカル5Gを補うものとして期待している。
プライベート5Gは、ユーザー企業が自ら無線免許を取得する必要があるローカル5Gと異なり、無線免許を持つMNO(移動体通信事業者)が整備した基地局によるセルラー5G(キャリア)回線を使って特定範囲内に必要な帯域で5Gネットワークを提供するマネージドサービス。ユーザー企業にとっては設備投資や保守・運用負担を低く抑えられ、且つ自社専用の5Gネットワークだけを利用できるため、ローカル5Gよりも導入ハードルが下がると期待されている。提供する事業者も出てきており、5G活用の方向性、サービスの1つとして期待されている。