【制御盤DXと設計・製造改革】Eplan×富士電機機器制御「Eplan Data Portal活用法」大量の3Dデータ登録で制御盤DX時代を先取り

電磁開閉器やブレーカーなど各種受配電機器と制御機器を製造・販売する富士電機機器制御は、盤内で使用する自社製品の情報発信について、自社ウェブサイトはもちろんのこと、電気CADメーカーが運営している製品ポータルサイトでの掲載を積極的に推進しています。なかでもEPLANのEplan Data Portalへは4万6000点以上の製品の3Dデータを掲載し、電気CADで盤設計をする設計者の業務負荷軽減や、設計・製造連携による生産性向上、さらには、その先の盤製造DXに向けた土台づくりを先行して進めています。

Eplan Data Portalの活用について、富士電機機器制御 事業統括部 業務部 担当部長 大濵一弘氏に話を聞きました。

FA業界と親和性の高いWEBで情報発信

本格的に製造業DXが進むなか、盤設計、製造を手がけるユーザーの立場になって機器メーカーとして何か彼らの役に立てることがないかと考えた結果、同社が着目し力を入れたのが、部品の3DCADデータの提供。

「FA業界は、お客様が製品情報を入手するのにWEBを使った情報入手が一番多い業界です。BtoBの中でも圧倒的にその傾向が高く、WEBとの親和性がとても高い」(大濵氏)とし、Eplan Data Portalへの掲載前から、自社のコンポーネント製品技術情報サイト「FeLibrary」で製品に関するCADデータ・図面・カタログ・マニュアルなどの多くの技術情報を公開・発信していました。

そのうちにユーザーから設計に直接使えるデータ、設計図面に取り込める形のデータが欲しいという声が多く寄せられるようになり、2016年頃から主要な電気CADへ製品データの登録を開始。Eplan Data Portalへの掲載開始は、ある顧客が電気CADとしてEPLANを採用し、データ提供を求めてきたことがきっかけでした。

大濵氏は「盤製造も人手不足や熟練作業者の不足といった社会課題があるなか、スプリング端子採用機器のF-QuiQなどの製品で課題解決に寄与すべく取り組みを進めています。これから進むであろう盤製造のDX、盤製造の自動化に向けてCADデータなど製品データの利活用は不可欠であり、そういった製造支援策として、将来を見据えたデータ整備を強化し、EPLANのみならず、様々なCAD媒体で製品データを提供しています」と言います。

製品開発と情報発信の両面から課題解決へアプローチ

データ登録を開始はしたが、大量の製品データを作成して登録するのは大きな手間も費用もかかる。取り組みをはじめた2017年当初はその効果がまだ不透明だったことから、コストをかけてデータを整えて電気CADメーカーのポータルサイトにデータを掲載することに対して二の足を踏んでいたとのこと。しかしその一方で、他社が大量の製品データをEplan Data Portalに登録していて設計者の目に多く触れられる状態になっており、同社が不利な形だったことから、キチンと予算を確保して整備していくことを決定。さらに、他社との差別化要素として他がまだ取り組んでいなかった全機種3Dデータでの登録をはじめました。

「当時はすでに盤用機器はコモディティ化し、他社との差別化が難しい状態になっていました。そうしたなかで独自性を出そうとすると価格かサービスに偏りがちですが、DXの流れのなかでは製品データに価値があり、設計者に向けてデータを積極的に提供していくことが重要です。

また、盤業界には人手不足や熟練作業者の不足といった社会課題があり、製品を開発する側はF-QuicQなどの技術で課題解決に取り組んでいます。一方、私たちマーケティングなど情報発信でお客様をサポートする部門では、これから進んでいく盤製造のDX、自動化というデータが価値を生む将来を見据えてデータ整備基盤を強化し、Eplanをはじめさまざまな電気CADのポータルサイトで製品データを提供することで課題解決に貢献しようとしています。製品開発と情報提供の両サイドから社会課題の解決にアプローチし、価値を創出していることが現在の当社の強みにもなっています」(大濵氏)

登録製品数4万6000品目 ほぼすべて3Dデータ

こうした甲斐もあって2024年現在のEplan Data Portalへの登録点数は4万6000品目で国内トップクラスで、グローバルでも上位に位置しています。特にそのほぼすべてが3Dデータになっているのが特長です。

3Dデータは2Dデータに比べて情報量が多く、データを揃えて登録するまでに手間もコストもかかります。それでも3Dデータ登録にこだわったのは「設計者の業務効率化と質の向上」と「DXに向けた将来への先行投資」。3Dデータによって設計段階でより正確な機器レイアウトや端子の位置特定が可能になり、さらにその先の設計・製造連携、DXにもつながってきます。

大濵氏は「EplanへのCADデータは3Dで公開しています。これは2Dではできない電線長や配線経路、立体的な端子位置関係を画面上で検証しやすくするためや、今後進むであろう設計から製造をつなげての電線加工の自動化、さらに制御盤組み立てのロボット化、またデジタルツイン環境での検証など製造業のDXの流れを見越した先行投資の側面もあります。さらに、欧州では加速しているPLM、PDM、ERPなど基幹側のシステムとの連携も行われており、将来的には日本でも必要になってくるのではないかと予想しています。

しかし結局は、これらの動きも大元をたどればデータ整備に行き着き、データがないと始まりません。そこへ向けて他社に先んじて取り組み、そこが差別化要因にもなっているのではないでしょうか」と解説します。

3Dデータ提供でユーザーの採用条件をクリア

実際に4万6000点もの製品登録を行った結果、どんな成果、効果があったのか?

大濵氏によると、「機械メーカー、設備メーカーなどから製品採用の条件としてEplanでデータ提供が可能であるかどうかの問い合せを受けることが増えています。長年地味にデータをつくり、データつくりの効率化、高精度化を試行して実施してきたことが売り上げに貢献できるようになってきて、とても嬉しい」と言います。電気設計にEplanを利用している企業では、Eplan Data Portal上での製品データの有無、または未掲載でもデータを提供できるかどうかが採用の分かれ目になっているケースが出てきているようです。

世界の新規顧客開拓の第一歩にも

さらに、「製品データのダウンロード実績を見ても、多くの海外のお客様がダウンロードしてくれていることが分かります。未販売の国からダウンロードされることもあり、市場のポテンシャルや進出可能性を探るのにも活用しています。日本製の優れたコンポーネントを海外ユーザーに紹介するプラットフォームとしてもEplan Data Portalは有効だと感じています」とし、世界への情報発信の場としても活用しています。

「モノのデータ」から「コトのデータ」提供へ

同社では、製品登録数の増加に加え、設計者の使いやすさの機能強化にも取り組み、自社ウェブサイト内にある、仕様から型式を選定できる「プロダクトセレクター機能」を、Eplan Data Portalに実装しました。すでに同社製品を使っているユーザーや標準品としてメーカーから指定が入っている場合は、製品型式が事前に分かっているので型式から仕様にあったものを選んでデータを活用できますが、仕様だけ決まっていて、そこから製品を検索する場合、探す手間がかかります。

「プロダクトセレクター機能を実装することで、型式が分からないお客様も仕様から型式を選んでデータが活用できるようになりました。弊社にとっても製品販売の機会が生まれています」(大濵氏)

さらに次の進化として、製品単体の基本データ、モノのデータだけでなく、最近増えてきているモジュールやユニット化したソリューション、回路のデータ化等も検討中。

大濵氏は「これからは『モノのデータ』だけでなく『コトのデータ』も提供していきたいと思っている。製品単品の『モノのデータ』でなく、例えば回路を一つにまとめてソリューション化した『コトのデータ』として提供すれば、海外規格・製品選定の難しさを解決したソリューションデータとして価値になります。北米に輸出する場合に必須であるNFPA規格に基づいたSCCR(短絡遮断電流定格)値の表示で困っているお客様が弊社に相談してくるケースも多く、SCCR値を入れたソリューションのデータ化や、機器の組み合わせによるSCCR値の算出ができれば『コトのデータ』として、こうした解決にもつながると考えています」と話しています。

https://www.eplanjapan.jp

https://www.fujielectric.co.jp/fcs

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