製造業DXソリューションと言いながら、蓋を開けてみると個別領域のデジタル化である場合は多く、製造業の「ものを企画して作って売り、サポートする」というビジネス全体のプロセスを包括したソリューションやそれを実現する方法を提示しているものはほとんどない。そのなかで経済産業省とNEDOは、製造業各社の経営・業務変革課題の特定を起点として、DXを実現するまでのステップとその手法を解説した「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」を策定し公表した。
現状、製造業ではデジタルソリューションを活用した変革がトレンドだが、経営課題や業務課題が特定されないまま部分最適が行われ、全体最適に到達しないという課題がある。ものづくりの変革の進め方とデジタルソリューションへのノウハウ不足がボトルネックとなっているケースもあり、それを補うもの、方向を示すものとして同ガイドラインを策定した。
ガイドラインは、調達・開発設計・営業等の周辺機能も含む製造プロセス全体を俯瞰した全体最適を目指すことの重要性をまとめた「ガイドライン本体」と、類型化した経営課題・業務変革課題の一覧となる「リファレンス①・③」、着眼大局、着手小局の姿勢で、具体的な課題の選択、プロジェクト設計に移れるよう経営課題と生産類型ごとの取り組むべき業務変革課題をまとめた「リファレンス①・②」、実現レベルに応じた取組概要「リファレンス④・⑤」、プロジェクト設計のプロセスや留意点、事例集「リファレンス⑥・⑦」で構成されている。
製造業(マニュファクチャリングチェーン)は、製品・工程設計を中心とした技術と情報をモノづくり各機能に訴求する連鎖「エンジニアリングチェーン」、エンドユーザーに商品供給するための材料調達から商品納入までの「もの」を中心とした業務連鎖「サプライチェーン」、自社の製造リソース(人、設備、工法、ノウハウ)により、原材料を加工し商品として仕上げる一連の工程の連鎖「プロダクションチェーン」、提供サービスの顧客への認知と品質の魅力の向上、及び納入後の商品価値を維持向上させるためのサービスを中心とした業務連鎖「サービスチェーン」の4つのチェーンがあり、スマートマニュファクチャリング実現には情報連鎖がシームレスに行われる仕組みを構築し、製造プロセス全体を俯瞰した全体最適が重要となる。
ガイドラインでは、各チェーンによくある経営課題・業務変革課題を累計化して57個を抽出し、それぞれに5段階のレベル区分で実現イメージを設定。それぞれの課題に対して「目指すKPI」「業務の現状と目指す 姿(ねらい)」「実現レベル 5 段階」をまとめ、さらに各レベルの業務の目指す姿と必要なソリューションのイメージも併せて整理してリファレンスとしてまとめている。
ガイドラインは誰でもダウンロードして閲覧可能となっている。
https://www.meti.go.jp/press/2024/06/20240628004/20240628004.html
https://www.nedo.go.jp/library/smart_manufacturing_guideline.html