出典:ヘボコン2024告知サイト
ロボコンのパロディ大会で、技術力の最も低く、面白いロボットを作った人に最優秀賞が与えられる「ヘボコン」が、6月29日土に東京・渋谷の東京カルチャーセンターで行われた。
ロボットコンテスト、通称「ロボコン」は、現在学生向け、企業向けなど多くの大会が開催されている。特にNHK学生ロボコンや、高専ロボコンなどは、ロボットエンジニアの卵たちが、斬新なアイデアや、設計・組立・操作など非常に高い技術を持ち寄って競技が繰り広げられ、毎年注目を集める。
「ヘボコン」はその「ロボコン」のパロディとしてはじまった。ここでは「技術力が高い」ことはむしろマイナス評価で、「面白い」ものが評価される。高い技術を使ったことがわかると、ペナルティまで用意されている。そのため、最も栄誉ある賞は「最ヘボ賞(最も技術力の低かった人賞)」であり、勝つことには価値がない。この大前提により、「ヘボコン」は失敗が許容(むしろ歓迎)され、笑いが絶えないアットホームな雰囲気で包まれたイベントとなっている。
笑が絶えない会場(2024年大会)
2024年大会は記念すべき10周年大会で、6月29日(土)に渋谷の東京カルチャーカルチャーで開催された。抽選で選ばれた32組がエントリーし、それぞれユニークなアイデアで製作されたロボットを持ち寄って、ロボット相撲方式の戦いを繰り広げた。
競技の間には特別企画「技術力高い人のデモンストレーション」として、東京高専のロボコンゼミが開発したロボット「MONONiTY」が紹介された。会場では実際に高速で紙飛行機を連射し、その機構の複雑さや動きのスムーズさに参加者も驚きの声をあげた。「MONONiTY」は2022年の高専ロボコン全国大会出場に向けて開発した「TRINITY(∞∞∞)」の派生機で、「TRINITY」の紹介動画は、Youtubeでも公開されている(https://youtu.be/rUCy4x1DraI)
東京高専ロボコンゼミによるデモ
ヘボコン2024 参加者
最も栄誉ある「最ヘボ賞」は観戦者の投票で決められ、競技としては初戦で敗退した「さとうファミリー」の「回転ずし」が受賞した。
「回転ずし」は規定で50cm四方のサイズ、重量1kgまで認められている「ロボット相撲」の競技にも関わらず、他参加者と比較しても圧倒的に小さい手のひらサイズが特徴。構想では超高速で回転する”だけ”だったにも関わらず本番では「前進する」という、製作者としては想定外の動きを見せたばかりか、競技後のデモではその「超高速の”回転するだけ”」の動きを披露し、会場を大いに沸かせた。
最ヘボ賞受賞チーム「さとうファミリー」とロボット「回転ずし」
審査員からの講評もあった。イグノーベル賞受賞者栗原一貴氏からは「ヘボコンは技術という武器が通用しないフィールドで戦う必要があり、コミュニケーション力という武器を使って、“リアルで強い人達”が、技術の仮面を被って戦う戦場」とヘボコンの素晴らしさが称えられた。また、初代最ヘボ賞受賞者のすずえり氏からは「とにかく楽しかった」、スポンサーでもあるセメダイン社舟橋靖芳氏、からは「“技術が無くても安全にしっかりくっつく”ことを大切に接着剤の開発を進めたい」というコメントが寄せられた。
スポンサー「セメダイン」によるロボット補修コーナー
ヘボコン創始者(ヘボコンマスター)であり、主催者でもあるデイリーポータルZの石川大樹氏は「産業用ロボット開発者や、それらのロボットを活用するエンジニアとは対極にある世界だが、ゆるく楽しむロボットの世界があることも知ってもらいたい」と語った。
ヘボコンマスター 石川大樹氏
大会の様子はYoutubeでもアーカイブ配信されている。
「ヘボコン2024」HP https://dailyportalz.jp/kiji/hebocon2024-kokuchi