富士電機機器制御は、1988年に発売を開始して以来、累計1億5000万台以上を生産・販売した電磁接触器・電磁開閉器「SCシリーズ」が、35年の時を経て「SC-NEXT」にフルモデルチェンジしたことを記念して、全国4カ所でプライベート展を開催している。
6月28日には埼玉県鴻巣市の開発・生産の中核拠点である吹上事業所で初日が行われ、新しくなったSC-NEXTと制御盤DXのトレンドを紹介する内容で来場者の関心度も高く、当初想定を大幅に超える1000人が参加する大盛況となった。会場の様子をレポートする。
想定を超える参加者で大盛況
今回のプライベート展は、「新形電磁開閉器 SC-NEXT 発売記念 富士電機機器制御プライベート展 盤の未来を考える強い製造現場の実現に向けて」のタイトルで、35年ぶりにリニューアルした電磁開閉器「SC-NEXT」の紹介と、人手不足を背景に近年注目が集まっている「制御盤DX」を2つの大きな軸として行われている。
主催者である富士電機機器制御に加え、シュロニガージャパン、フエニックス・コンタクト、ライオンパワー、EPLAN、リタール、i・テクノロジーが協賛会社となって得意技術と製品を持ち込み、実機やデモ、パネル展示とセミナーを通じて制御盤関連の最新トレンドや技術、製品、ソリューションを提案する濃い内容となっている。
6月28日の吹上事業所に続き、7月12日には大阪・梅田スカイビルで行われ、この後、7月26日に名古屋のウインクあいち、8月30日に福岡のTKPガーデンシティPREMIUM天神スカイホールでの開催が予定されている。吹上事業所会場では当日雨天ながら1000人が参加し、大阪会場も申込時点で600人を超えるなど、当初の想定を超える反響となっている。
SC-NEXTと制御盤DXが学べるメイン会場
吹上事業所会場では、機器などを展示するメイン会場と、3種類のセミナーを行うセミナー会場に加え、隣接するラボで全自動電線加工機の実機デモ、ショールーム「テクノウェーブ吹上」で電磁開閉器やコマンドスイッチなど同社の主要製品ラインナップやこれまでの歩みなどの見学もでき、開発・生産拠点のメリットを最大限に活かしていた。
メイン会場は、SC-NEXTを大々的に紹介する「新形電磁開閉器」、制御盤DX実現を手助けする協賛会社の展示を中心とした「盤製作における生産性向上」、制御盤DXで実現する未来の制御盤の形となる「次世代制御盤」、カーボンフットプリントや海外規格などへの対応法を紹介する「課題解決ソリューション」、受配電盤の更新に役立つ製品を紹介する「受配電リニューアル」の5つのテーマを設定してコーナー化。入口からすぐのSC-NEXTコーナーから順番に見ていくと、制御盤の設計・製造を効率化する方法、制御盤の未来像、メンテナンスや日常の現場作業を便利にするコツ、新たに設備更新する際のポイントなど、ストーリー性ある形で情報が得られるようになっていた。
35年ぶりのリニューアル。進化した新形電磁開閉器SC-NEXT
「新形電磁開閉器」コーナーでは、これまでのモデルとSC-NEXTを並べて特長を分かりやすく提案。SC-NEXTは長寿命・高信頼性という従来の良さを継承しながら幅寸法を最大28%小型化し、従来品と並べて展示することでサイズダウンが一目で分かるようになっていた。また故障の原因となる粉塵の侵入を防ぐ新設計や、コイル消費電力低減による消費電力25%低減の工夫、再利用可能なプラスチック材料の98%利用など、世界的な環境トレンド等への対応も訴求し、進化した電磁開閉器のイメージを印象付ける展示を行っていた。
盤設計・製造を効率化する具体策を提案
続く「盤製作における生産性向上」コーナーでは、制御盤DX実現を手助けする協賛各社による提案が行われ、来場者が展示を見ては質問する様子がずっと繰り返され、制御盤業界の人手不足、効率化需要の高まりを感じさせた。
入口近くから、EPLANによる電気設計CADとデータを使った電気設計の効率化手法からはじまり、フエニックス・コンタクトと富士電機機器制御による配線作業を削減するためのプッシュイン対応機器・コンポーネンツ採用とフェルール使用促進の提案、シュロニガー・ジャパンによる電線自動加工機を使ったワイヤーハーネス製造の自動化・効率化の提案、フエニックス・コンタクトによる専用工具を使った配線作業の効率化、EPLANの配線作業指示のデジタル化提案とつながっていき、制御盤の設計・製造の各工程における自動化、省力化、効率化の具体的な手法に来場者は興味津々の様子だった。
制御盤の進化系 次世代制御盤コーナー
続いては「次世代制御盤」のコーナー。いま制御盤がどのような形に進化しているのか、機械メーカー等の要望はこうなっているといった事例を、実際の制御盤を持ち込んで展示紹介していた。
小型機器の採用とダクトレス、DINレールの配置の工夫などで盤内の空気の流れを良くして温度上昇を抑えた制御盤や、制御盤メーカーのi・テクノロジーの設計・製造による、モータやインバータ、電源など各機能ごとにユニット化し、それらをケーブルでつないで制御盤として機能するユニット選択型制御盤、前面フラットで出っ張りをなくして衝突事故を防ぐ半導体工場向け制御盤などを展示。
またリタールは、バスバーをボードユニット化し、機器をはめ込むだけで接続できて電力供給ができるようになる技術「RiLine Compact」を展示。配線や組み立て、メンテナンスや更新時に便利なバスバーの標準化技術として注目を集めていた。
SCCRやリモート監視などソリューションも提案
「課題解決ソリューション」コーナーでは、制御盤にまつわる各種の課題解決に役立つ提案を紹介。北米向け機械・制御盤では対応が必須となっているSCCRについて、SCCRをイチから学べ、SCCR対応製品を選定できるWEBサービス「SCCRポータル」の紹介や、リモート電力監視、HMI、手書きの作業書類の入力効率化ソリューションなどを提案。
「受配電リニューアル」コーナーでは、新JIS 62271−200への対応法や母線直結型ブレーカーなどを受配電盤の更新に役立つ情報を発信していた。
満員御礼 具体的な内容で好評だったセミナー
セミナーでは「北米規格対応ソリューション/新形電磁開閉器 SC-NEXT」、「生産性向上の取り組み」「次世代制御盤2030の将来と展望/新形電磁開閉器 SC-NEXT」の3種類の講演を行った。メイン会場の展示内容を深掘りする内容で、テーマも制御盤に絞られて具体的だったことから、事前予約だけでなく当日の参加希望が殺到。定員100人で各回1回ずつの予定だったのを、実施回数を増やして対応した。
各講演ともに、人手不足対策としての機械化・自動化需要の高まりで制御盤需要は高いにも関わらず、制御盤業界も人手不足で作れるキャパを増やせないという制御盤業界の悩ましい現状を解説し、その状況を打破するための解決策や今後の筋道を提案した。
吹上事業所会場だけの特典 全自動電線加工機の実機デモ展示
また、吹上事業所会場のみの特典として、隣接するラボ施設にライオンパワーの全自動電線加工機を設置してデモを披露。自動で好みの長さへのカットから皮剥き、圧着端子の取り付け、マーキング、必要本数の結束までを行い、現在の半自動作業から次の全自動化への筋道ができていることを提案。来場者は滅多に見られない加工機をまじまじと眺める姿が印象的だった。
さらに、普段は予約が必要な同社の体験型ショールーム「テクノウェーブ吹上」も自由に見学でき、展示会場では紹介しきれなかった受配電盤や創エネ・省エネ、機械制御などを見て回ることができた。また過去に同社が製造・販売していた家電製品など珍しいものも展示されており、来場者からは「懐かしいね」などの声が聞こえた。
7/26名古屋、8/30福岡で開催
プライベート展は、この後、7月26日に名古屋のウインクあいち、8月30日に福岡のTKPガーデンシティPREMIUM天神スカイホールでの開催が予定されている。
https://www.fujielectric.co.jp/fcs/feature/privateexhibition_2024.html