アドバンテックは6月14日、大阪市・桜ノ宮のTKP大阪リバーサイドホテルで、パートナー企業を招待して「パートナーカンファレンス2024」を開催し、創業41周年目を迎えた同社の現在位置と将来、2024年度以降の注力領域や技術について紹介した。
年間売上高3000億円超 台湾を代表するFAメーカー
アドバンテックは、1983年台湾で創業。世界26カ国に展開する産業用電気機器メーカー。産業用PCメーカーと見られることが多いが、実際には、組込用の各種モジュール、産業用スイッチやゲートウェイなどのネットワーク機器、電源、I/O機器、センサ、産業用ソフトウェア、IoTソリューションなど幅広い製品群を提供している。
FAを中心とするインダストリアルIoTと、組み込みを中心とするエンベデッドIoTの2つの事業領域でビジネスを展開し、2023年度のグローバル売上高は20億ドル(約3000億円)。台湾を代表する大手FAメーカーとなっている。
第1部 キーノートセッション
「10年間で日本市場での売上を3倍に」
吉永和良 代表取締役社長
カンファレンスは3部制で行われ、第1部はキーノートセッションとして、アドバンテックと日本法人の現在位置とこれからの成長戦略についての講演を行い、第2部はインダストリアルIoTとエンベデッドIoTに分かれて、それぞれの戦略や注力領域を具体的に説明した。3部は懇親会が行われた。
イベントの開幕を飾ったのは、台湾本社から6月に日本法人の新社長としてやってきた吉永和良 代表取締役社長。「アドバンテックの成長戦略ーグローバルと日本、新たな10年を育むー」としてスピーチを行った。
吉永氏は「アドバンテックは1983年設立で、売上高は20億ドル(約3000億円)、9000人の社員がいます。高い成長率と高収益モデルで発展を続け、時価総額は1兆5800億円に達し、日本の上場企業のランキングで見ると、118番目くらいにランクインするところまで成長しました」と現状を説明。
グローバルの目標・成長戦略について「2030年に50億ドルを目指す」と宣言。具体的なプロセスについては「次の成長を牽引する2つのキーワードとして『IoT』と『AI』があり、IPCメーカーから『エッジコンピューティングのプラットフォーム企業』へと進化していきます」とし、その実現に向けて「3つのA」に取り組む方針を示した。
3つのAとは、①ABC(Advantech Branding&Communications)、②APS(Advantech Production System)、③ASC(Advantech Software Center)で、①ABCではアドバンテックのブランド・認知度の向上、②APSでは、多品種少量生産の仕組みづくり、③ASCではソフトウェア開発の強化を進めていくとした。
日本法人については「今後10年間で今の売上規模の約3倍まで伸ばしたいと考えています」とし、そこに向けて「利他と共創・製品開発・ものづくり」を3つのキーワードに挙げ、パートナープログラムとサービスの拡充、日本市場のニーズに合った製品開発、福岡県の直方工場をモデル工場となるよう2年かけて改修し、日本の生産方式を世界に広げていきたいと話した。
吉永氏の講演に続き、コーポレート戦略室 木下 誠 取締役が「国内サービス 一層の拡充に向けた取り組み」として、日本法人の概要、IIoTとEIoTの各事業とリーダーを紹介し、パートナープログラム強化について話した。
「日本のIPC市場は、世界でも中国とアメリカに次いで需要が大きい国。2023年まで13.4%の成長率で伸びると見込まれている有望市場です。IoTもエッジAIも2桁以上の拡大が見込まれており、アドバンテック全体として価値提供をしていきます。日本国内ではパートナー制度を見直し、適切な商流で買える形にしてきました。現在14社とパートナー契約を結び、商材の提供、プロモーションの協賛、デジタルプロセス連携などに取り組み、地域に根差したサービスを展開していきます」とした。
第2部 セミナーセッション インダストリアルIoT統括事業部
「ドメイン特化戦略をパートナーと一緒に取り組む」
イーロン・シェン インダストリアルIoT統括事業部 バイスプレジデント
第2部では、インダストリアルIoT統括事業部とエンベデッドIoT事業部に分かれて、各事業のより具体的な取り組みを紹介した。
IIoT事業部は、はじめにインダストリアルIoT統括事業部 バイスプレジデントのイーロン・シェン(Ilung Shen)氏が「パートナーとの協業で開拓する産業用IoTのターゲット市場」と題して講演。「40年を振り返ると、当時アドバンテックは台湾のローカル企業で、ビジネスを生み出すためには地域に特化したパートナーの手助けが必要でした。パートナーのおかげで今では世界27カ国以上に拠点を構えるグローバル企業になり、通信ネットワークやビジョン、モーションなどのビジネスを成長させることができました。2013年まではフェーズ1としてハードウェアビジネスが中心、フェーズ2はIoTなどハードウェアとソフトウェアの統合ソリューションを提供してきました。これからのフェーズ3では、パートナーとドメインに特化した取り組みを進めていきたいと考えています。インダストリアルIoT統括事業部ではIA(インダストリアルオートメーション)とIsys(インテリジェントシステムズ)に焦点を当て、IAはインテリジェントファクトリーとエネルギーを中心に、Isysは、半導体、エレクトロニクス、道路・交通、エッジAIサーバーにフォーカスしていきます」とした。
古澤隆秋 インダストリアルオートメーション事業部 ダイレクタ
「PLCの代わりとなるPC制御の提案を強化」
続いてインダストリアルオートメーション事業部 ダイレクタの古澤隆秋 氏が「iオートメーションビジネスの未来像とヒット用途のご紹介」と題して話し、「成長カーブを作っていくために必要なこととして、まず『オートメーションの会社の世界トップ10に入る』こと。それを実現すれば名実ともにオートメーションの会社であると認識してもらえるようになります。そのためにもPLCの代わりとなるPC制御をしっかりやっていくことが重要となり、色々なものがつながることでクラウドのビジネスが拡大していくことになります」とし、PC制御を軸に展開する方針を明らかにした。
PC制御の促進を進めるにあたり、その土台となるソフトPLC「CODESYS」について、「コントローラ市場は、自動化需要によって伸びる見通しです。しかし日本は真面目に仕事をやっているにも関わらず労働生産性が低く、その理由として、PLC、画像、モーション、ロボット、IoTなどオートメーションに必要とされる基本的な機器構成は、日本の場合はそれぞれメーカーと技術が異なり、機器担当者が別々で、何人もの人が関わっている状況があります。それに対し海外では、ロボットも画像もモーションも1人でやっていることが相当数あり、それを可能にしている土台がCODESYSというソフトウェアです。欧州の主要メーカーはCODESYSをベースとしたコントローラを作っており、CODESYSは国際認証であるIEC−61131−3に則り、ラダーも高級言語もファンクションブロックも使えます。プロトコルを選ばずに使え、産業用ネットワークにもつながり、HMIソフトも入っています。クラウドにもつながり、ロボットやセーフティーシステムも構築でき、あらゆることが1つのソフトウェア上でできるのがCODESYSです」と解説。注力製品としてCODESYS搭載の超小型コントローラ「AMAX5570」を挙げ、「今までPLCとPCを組み合わせて使っていたものが、これを使えば1台で、PLCと同様にIOが挿せ、データを貯められ、クラウドにも繋げられる。今までと同じ予算感でPLC+PCが実現できます」とメリットを紹介した。
加えて、クラウドサービスである「WISE-PaaS IoT」とIoTゲートウェイ「EdgeLink」、ネットワーク接続サービス「remote.it(リモート.イット)」を活用したセキュアな遠隔監視・制御サービスを紹介。「出荷した装置でトラブルがあり、現場に駆けつけられない場合、リモート接続でもセキュリティが求められます。EdgeLinkとremote.itを使えば、ポートを閉じた状態で装置とP2P通信ができ、リモートでPLCの情報を取得し、ラダープログラムを書き換えて対応できます。オペレータが1人の場合も、WISE-IoTにはラインの状態監視や生成AI搭載して会話でアドバイスをもらえるような仕組みも組み込まれており、人手不足と生産性向上に貢献できます」(古澤氏)
最後に11月28日〜29日に台湾・林口キャンパスで行われるグローバルイベント「iAutomationFocus」を紹介し、ぜひ参加して欲しいとした。
「半導体と社会インフラのトレンドを掴む」
井桁 晶子 インテリジェントシステム事業部 ダイレクター
Isysのインテリジェントシステム事業部 ダイレクターの井桁 晶子 氏が続き、半導体と電子部品・デバイス業界の生産設備を中心に、道路交通や鉄道など社会インフラにも力を入れていくとした。
「半導体市場は2020年の50兆円から2030年には100兆円まで成長すると言われ、EtherCATベースのコントローラやIO製品など提案できる新製品群も出てくる予定になっています。製造装置メーカーは装置を売るだけでなく、データで稼ぐことを重要視するようになっています。特に日本の製造装置メーカーはグローバル市場でも強く、稼働監視や故障予知などでIO製品やHMIを使ってもらえるよう提案を強化していきます。
また鉄道や道路など社会インフラは人口減少により、AIとIoTを組み合わせたスマートメンテナンスが進み、当社でも実例が出てきています。メーカーとSIerが組んでインフラの輸出も増えており、国内だけでなく、グローバルのトレンドをキャッチアップし、提案を進めていきます」とした。
エッジAI、IoTを強化する新製品を紹介
その後は各製品担当から新製品紹介が行われ、産業用PC・サーバーでは小型・高性能+GPUカードの需要トレンドに対応したモジュラーIPC「MIC-770+iModule」と「IPC-730]、小型GPUサーバー「SKY602E3」を、オートメーション向け製品として、PLCベースからPCベースの制御となる「AMAX I/O」、エッジでのAI利用に最適な「MIC-733-AOエッジ生成AIシステム」、「UNO-148V2+MXM」、薄型スマートになったパネルPCを、ネットワーク・IO製品として、アンマネージドスイッチ、LoRaWAN、WiFi、LTEの各無線通信用機器、EdgeLink対応ECU-1000製品、クラウドからのエンドツーエンドのI/O管理機能を追加した「ADAM-6000/6200」を、WISE-IoTソリューションとして、予兆保全とAIアシスタントを紹介した。