
矢野経済研究所は、2024年度の完全人工光型の植物工場運営の市場規模を調査し、2023年度の生産者出荷金額ベースでは前年度比4.5%減の210億円となり、2024年度は1%減の208億円と予測した。
完全人工光型の植物工場は90%以上がレタス類を生産しており、近年は撤退や再編によって供給量は減少傾向にある。2024年度も大規模植物工場の生産停止が発表されるなど微減を見込んでいる。一方で、天候不順により露地野菜の調達市場が乱高下していることもあり、供給量と品質が一定な植物工場産野菜の需要は業務用・小売用分野ともに拡大傾向。2025年度以降は、新たな大規模植物工場の稼働開始や既存工場の稼働率向上などが見込まれており、運営市場規模は再び増加するとみられている。
また、食品へのカエルや虫など異物混入のニュースが相次いでおり、安全面からも異物混入リスクの低い植物工場産野菜への引き合いは高まっている。生産品目もレタス類からイチゴやバジルなどハーブ類への拡大が見込まれており、それ以外にも代替たんぱく質としての大豆、メロンや稲など新規品目の研究開発も進んでいることも追い風。2028年度には240億円まで拡大するとみられている。
一方で、電気代や人件費等のランニングコストの高騰に加え、物流2024年問題に関係して輸送や運賃への懸念も拡大している。消費力離れた立地の植物工場では影響が出始めており、トラックへの混載や相乗り、常温輸送、商圏の見直し、工場内での加工品化など物流コスト抑制のための対策が取られている。