現在の世の中はデジタルが牽引しているような印象を受けます。しかし日本はデジタル化においては欧米と比べて周回遅れといった残念な評価を受けています。今回のワクチン接種での一部自治体システムの使いにくさによる混乱などを見ると、確かに遅れがあり挽回の必要性を感じます。そして同様のことがモノづくりの現場にもあると思います。日本の製造業、特に中小の製造業にはこの課題を自分たちで解決できずに困っている所を多く見かけます。これは後回しにできない問題です。
と、偉そうなことを言いましたが、実は私も少し前までこの方面ではかなり後れを取っておりました。これまでに積み上げてきたアナログの知識や経験を生かせず、多少怖気づいていたのだと思います。しかしモノづくりの指導をしている私が世の中の変化から逃げる訳にはいかないと気付き、遅ればせながら勉強を始めることにしました。
そこで最初に手を付けたのはYouTube の活用でした。例えばパソコンがおかしくなった時、それまでは周りにいるできる人に助けを求めていたのですが、まずはスマホでYouTubeを開いて自分で調べてみることを始めました。「何それ?!」と呆れられてしまうと思いますが、私はそれまでYouTubeを若い人たち向けの専用テレビと思い込み、全く見ていなかったのです。
しかし覗いてみて驚きました。私が困っていたパソコントラブルに関してはほとんどの答が用意されている!それどころか、ビジネスや健康に関することはもちろん、私が学びたいと思っていた哲学なども世界的に有名な先生が動画で登場し語っていると知りました。
既にこんな高レベルのものが大量に存在していたにもかかわらず、私は全く知らずにおりました。完全に置いて行かれていた!原因は私がこのデジタルの世界を何となく避けていたからです。いつの間にか世の中はこんなに進んでいたのに食わず嫌いでボーッとしていた…。私のショックは大きいものでした。
そこでこの状態を抜け出す一番の方法として私はYouTubeを始めることにしました。昨年4月のことです。若い人たちのサポートを得ながらですが、『柿内幸夫の現場改善研究所』というYouTubeチャンネルを立ち上げました。やってみて分かったことは、今のテクノロジーではスマホがあればだれでもお金をかけずにこのYouTube発信を始められるということ。一方でそこでの競争の厳しさや勝ち進む人の努力のすごさなどがすぐに分かりました。
お蔭様で『柿内幸夫の現場改善研究所』は投稿動画数が100を超え、チャンネル登録者も1000人になりました。そしてどうやったら視聴者数を増やせるかなどを自分で必死に考えるようになった結果、このデジタル世界の奥深さと避けて通れない大切さを知ることができました。作り方も売り方もこれらを知っているかどうかで全く変わってしまいます。もしこの気づきを得る体験がなかったら、今頃私はどうなっていたのだろうと考えると冷や汗が出ます。
私のように苦手意識の先入観を持つことは今の時代とても危険です。食わず嫌いをしないで新しいモノにチャレンジしましょう! 近くにいらっしゃる先生(若い人たち)に教わりましょう!
■プロフィール
柿内幸夫
1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。
経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長改善コンサルタント、工学博士技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授
著書「カイゼン4.0-スタンフォード発企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所<101項>」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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