⚪︎⚪︎芸、⚪︎⚪︎道が日本には多く、それがユニークな日本文化を育んできた。日本人の気質にもその影響は強く影響し、真面目さや探究心の強さ、責任感の強さなどとなって現れている。その一方で、芸や道を尊ぶ心理が、いま日本の足枷となり、限界を作っている面もある。
「職人芸」や「熟練の技」、「匠」は日本人が好きなフレーズで、製造業にもそれを過剰に持ち上げる風潮がある。確かに職人芸や熟練の技、匠それ自体はその人の努力の賜物ではあり、素晴らしいものである。しかし製造業は量産して稼いでナンボの世界である。その人にしかできない技術は、それ自体が付加価値であると同時にボトルネックでありリスクである。その人が衰えたら、いなくなったらどうするのか。人に依った技術の危険性、リスクを経営者はきちんと認識しなければならない。量産ラインの重要な箇所に配置したまま喜んでいる場合ではないのだ。
製造業と伝統産業は違う。開発した技術、高めていった技術はいち早く標準化して誰でもできるものに変えていく。そして熟練者を中心に技術を次のレベルに引き上げていく。そのサイクルを回し、付加価値を上げ、生産性を高めていくことこそ重要なのである。製品を作って終わり、納めて終わりではなく、安定して作って納められるようになったら次の進化に向かっていく。それが今日本に求められる芸と道なのだ。