オートメーションという言葉や概念は製造現場の機械設備自動化だという理解から始まっている。製造現場のオートメーションによって国内経済が成長しオフィスの近代化が始まった。オフィスの生産性向上から多くの事務機器が生まれた。各種の事務機器を装備することがオフィスのオートメーションと言われ、それまで使っていたオートメーションの概念が広がった。製造現場のオートメーションをFAと言いオフィスのオートメーションをOAと言うようになった。製造現場に出入りするFAの販売員に聞いて見た。『製造現場でオートメーションという言葉を使った会話をしたり聞いたりしたことがあるか』。そう言えばといった面持ちで聞いたことがないと言う。その反面、コンピューターや通信技術の進化発展に伴ってOA分野ではオートメーションという言葉はよく使われている。ただ現在のオフィスオートメーションと言えば事務機器類を装備するオフィスを意味するのではない。オフィスのルーティンタスクの自動化やハイパーオートメーションのようにビジネスプロセスの自動化を意味する。現在の製造現場ではオートメーションやオートメ化という言葉は使われなくなったが機械や設備の自動化が始まった頃の工場内ではそれらの言葉はよく使われた。現在のFA商品の先駆けとなる部品はオートメパーツと言われたように技術者も販売者もよくオートメーションという言葉を使い、耳にした。この様な現象はこの頃、オートメーションという言葉には夢があったからである。国内の経済規模が大きくなりそれに伴ってFA技術は大いに発展した。工場の生産設備は着々とオートメ化が進み、工場のオートメーションは夢ではなく現実になった。その後オートメーションという言葉は製造現場や販売員から聞かなくなった。製造機械や生産ラインのオートメーションはあたり前になって、その言葉には夢がなくなったからである。情報化社会に入ってオートメーションという言葉はまずオフィスで復活した。オフィスのオートメ化が進み、事務作業を効率化するための自動化、つまりルーティンタスクの自動化は花盛りである。
昨今ではAI技術や他の情報技術を組み合わせてビジネス工程の最初から最後まで可視化して無駄をなくすハイパーオートメーションへの取組みが行われている。情報化社会のオートメーションはオフィスの自動化から始まってきたが製造現場に入って機械設備のオートメーションと合わさって化学反応をする。それがFA現場で言うITオートメーションということになる。これが成熟するのはまだ先のことではあるが製造現場ではオートメーションという言葉が化学反応により復活してITオートメーションやiオートメーションと言われて頻繁に登場している。これからの夢のある世界である。FAの販売員はITオートメーションにどう取り組めばいいのか。大半の販売員はエンジニアリングやコンピューターソフトに明るくない。座して待っていても従来のように顧客から声がかかってくるとは限らない。FAマーケットの黎明期に販売員は制御や電気知識があったわけではない。もしFAの黎明期から現状の工場のように自動化で動く現場であったならば当時工場に出入りしていた販売員にとってはどのように映っただろうか。おそらく自分たちの需要とは思ってなかったはずだ。オートメ化は一気に起きなかった。部分的にオートメ化に接して商売している間にFAのイロハを覚えてきた。ITオートメーションも同様でありITオートメ化の夢が実現しているイメージを持てば臆してしまう事をFAの販売員は理解すべきである。