「アフターコロナ」。すっかり死語となってしまったが、コロナ禍が収まった後はデジタル技術がさらに進化・浸透し、リモートワークが当たり前になり、バーチャルやメタバースが急速に普及して、デジタルメインの時代が来るなんて予測も見られた。しかし現実の世界はそう思い通りにはいかないようだ
実際は、コロナ禍での行動制限や密・接触の回避を我慢し続けた結果、このアフターコロナでは、デジタルやバーチャルの効率の良さや手軽さよりも、リアルな行動やコミュニケーション、体験の喜びや楽しみが再評価されている。もちろん設計や生産、検査、保全といった製造業務、事務系の定型業務はデジタル化や自動化で非効率を減らす方向になっているが、企画や営業提案などコミュニケーション要素が求められる非定型の業務は、時代が遡ったかのようにリアルの評価が高く、満足度も高かったりする。時間をかけて通勤、または顧客のもとに赴いて、さらに時間を使って対面で話をする。時間が評価基準であれば非効率だが、相手との親密度、打ち合わせの集中度、対面にともなう相手の機微な変化のキャッチアップなど数字では表せない部分で成果や価値ある情報を獲得できていたりする。それまではそんなことは気づきもしなかったが、コロナ禍でリモートワークを強いられたからこそ気づけた、目に見えないリアルの効果。これもやっぱり想定外だった
効率と非効率、リアルとバーチャルの間で極端に針が振れた結果、あらためて明らかになったのが「人は感情で動く生き物である」ということ。無駄な業務はやりたくない、でも気持ち良く仕事をしたいというのは人の本能。それぞれの業務によって効率的で成果の出るやり方は異なる。一律でデジタル化すれば良いというのは大間違い。表面的な効率を見るのではなく、業務の本質を掴むことがさらに重要になるだろう。