長年にわたって構築された硬直化した社会構造や経済、文化に対し、既存の枠組みや常識の範囲外、新しい技術等でアプローチし、変革を促すものとして期待されるスタートアップ。社会経済に刺激を与え、人材の有効活用にも大きな役割を果たす一方で、未成熟や発展途上の企業が多く、途中で脱落する企業もあるなかで、どれだけの存在価値があり、立ち位置にあるのかが明確になっているとは言い難い。
経済産業省は、スタートアップが日本経済にもたらしている経済効果を調査し、「スタートアップによる経済波及効果」としてまとめた。
調査によると、スタートアップによる経済効果は、スタートアップ自身の経済活動により創出された付加価値(直接投資)は10.47兆円、雇用創出は52万人、所得創出は3.17兆円。
スタートアップに対するサプライヤーの経済活動や所得創出にともなう消費支出が引き金となって連鎖的に創出された経済効果(間接波及効果)も含めた創出GDPは19.39兆円となった。創出GDPの19.39兆円は、北海道や福岡県の県内名目総生産に相当する額で、スタートアップは日本経済に一定程度の貢献をしていることが分かった。
産業別では、情報通信産業で5.69兆円、対事業所で3.58兆円、商業で3.09兆円、不動産で1.81兆円、金融・保険で0.93兆円、その他4.28兆円となり、情報通信産業を筆頭に上位5つの産業によって創出GDPの78%を占めている
また、調査対象約9000社超のうち70%がベンチャーキャピタル(VC)から出資を受けており、それらの企業での創出GDPは13.94兆円。直接投資額でもVC投資ありの企業が72%を占め、VC出資を受けている企業の方が経済波及効果に強い存在感を占めていることが分かった。
さらに、M&Aの担い手、女性活躍の面でもスタートアップの動きが目立つ。スタートアップが買い手となったM&Aは10年前に比べて78件増加しているのに対し、そのほかの企業では1件減少。社長数に占める女性の割合は、スタートアップが8.8%なのに対し、大企業は0.5%。女性活躍の場としても作用している。
https://www.meti.go.jp/press/2024/07/20240722002/20240722002.html