ビジネスはよく戦争に喩えられる。物流を表すロジスティクスはもともと兵站の意味だし、マーケティングではターゲット、ストラテジーなど軍事用語が飛び交う。戦争における目標地点を制圧することと、ビジネスにおけるお客様またはマーケットという標的を落とすことはプロセスが似ている。そのあたりも影響しているのかもしれない。
ビジネスは生死こそ賭してはいないが、勝ち負けひとつで天国と地獄を味わい、悲喜交々さまざまに感情を揺さぶられる。結局ビジネスは大人による本気の戦いであり、毎日が戦場。勝ちたい/負けたくない、やるかやられるか、やらなければ自分がやられる。そんな世界だから戦争に例えられるのも当然だ。
とは言え令和になって、コロナ禍を経て、人々の意識やビジネス環境が変ってきた。例えば「共創」といった言葉や取り組みが当たり前になったり、持続可能性、BCPといった要素も無視できなくなっている。かつては物が不足し、作れば売れた時代であり、パイを奪い合う激しい生存競争だった。しかし今はものが溢れ、パイの残りも少なく、相手を倒して勝ち取るというよりも、市場の生命力を見ながら、ほどほどに収益を上げる方向へとシフトしている。その意味では、ビジネスは生命を奪い合う戦争から、競い合って昇華するスポーツや競技的な側面を見せ始めている。「殴り合い」から「競い合い」へ。この変化がどう影響を与えるのか。注目だ。