右から杉山氏、植野様、瀬戸口氏、徳田氏
株式会社ヒラノテクシード(奈良県北葛城郡河合町)は、塗工や乾燥、基材搬送に高い技術力を持ち、各種フィルム塗工ラインや電子材料塗工ライン等を製造している産業機械メーカー。
近年はEV需要の高まりからEV向けのリチウムイオンバッテリの電極製造ラインも手がけ、国内外から多くの引き合いが寄せられています。
同社は社内システムの刷新に合わせて電気CADにEplanを採用。世界で最も広く使われているCADであるEplanを軸に、自社の設計業務も世界標準に合わせられるよう自社ルールを整備中。同時に社員のEplan習熟度の向上に力を注ぎ、設計業務の効率化を進めています。
同社の設計部門 カスタマーサポート部 カスタマーサポート二課 課長の杉山 勉 氏、設計技術部 電気設計課 課長の植野 光善 氏、電気設計課 二グループ グループ長の瀬戸口 文生 氏、徳田氏に話を聞きました。
創業1935年世界有数の塗工装置メーカー
ーー御社について
当社は1935年創業の産業機械メーカーとして、お客様の用途・要望に応じた機械を受注生産しています。熱交換器や送風機の設計・製造・販売に始まり、熱と風の技術を応用した乾燥機へ展開、材料を均一に塗布して乾燥する技術領域に事業を広げ、今ではコーティングやラミネーティングなどの装置を主力製品として、乾燥・コーティング・ライン制御技術において世界トップクラスの実力を持っていると自負しています。
大手メーカーからの指定をきっかけに導入
ーーEplan導入のきっかけと経緯について
デジタル化に向け、5・6年前に会社全体のITシステムを刷新することになり、生産管理システムも新しいものを導入することが決まりました。その際、30年近く使ってきた既存の電気CADだとシステム連携が難しく、電気CADも見直しすることになりました。その時は別の電気CADを採用したのですが、Eplanも選択肢のひとつとして上がっていました。
また、当時は世界的にEV関連の投資が盛んで、欧米でリチウムイオンバッテリの製造工場が立ち上がったり、増産を進めている時期でした。当社でもリチウムイオンバッテリの電極製造装置の注文が増え、例えばPLCは指定でシーメンス製となっているなど、これまでとは異なる海外仕様の設計が求められる案件が目立ってきていました。
そんな状況のなかある海外のお客様から、電気CADはEplanを使いなさいという指示があり、再びEplanを検討しました。選定する過程でEplanは世界ではスタンダードで使われている有力な電気CADであることを知って興味が湧きましたが、その時の注文は単発だったのでEplanの正式採用は見送り、Eplanで設計できるパートナー企業に仕事をまかせることにしました。
そうしたらその後、また別の海外大手のお客様から電気CADはEPLAN指定でという注文が入りました。その時に、これだけ需要があるなら自分たちもEplanを使った方が良い、社内でEplanが使えれば外注費も抑えられると思い、ここで初めてEplanの正式採用が決まりました。
ーー二転三転しましたね
しかしEplanの採用によって、昔から使っている既存の電気CAD、新規採用した別の電気CAD、特別なお客様用のEplanということで、1つの社内で3種類のCADを併用するという状況になってしまいました。そこで、再び電気CADを整理することにしました。
その際、欧米を含む海外ユーザーの仕事が増えてきていたこと、実際に現場で電気CADを使っている設計部門にアンケートを取ったところ、Eplanが高評価だったことから、社内の電気設計は既存の電気CADとEplanを併用していくこととし、特にEplanを軸にする方向へ舵を切ることになりました。
単なる作図から情報を積み上げていく設計へ
ーーEplanの操作にはすぐ慣れることができましたか?
新規採用した別の電気CADがEplanと同じく情報を積み上げていくCADだったので、抵抗感なく移行できました。
Eplanを軸にするといっても、実際はこれまでに既存の電気CADで描いた図面の資産があり、それをEplanで作図していくところから始めました。イチから装置を設計するのではなかったのでEplanでどうかくのが良いのかに集中ができ、結果としてそれが使い慣れるための近道になったと思います。
ーーEPLANと既存の電気CADで違ったこと、変わったことはありましたか?
既存の電気CADは、ショートカットキーなどを使い、各人が頭の中にあるものを自由に図面に落とし込み、まさに設計者が「絵を描く」ようなものでした。製品や電線の太さなどの付加情報はいつでも好きなタイミングで付け加えることができました。
それに対してEplanの場合、色々な機能を使いながら、部品を置き、情報を付加し、次の部品に行くといったように、手順通りに作業を進め、システムを構築していくような形でした。自分の好きなように図面を描いていたものから、ちゃんと手順を踏んでいかないと前に進まないやり方に変わり、はじめは戸惑いました。しかし、若いメンバーが多いチームなので、新しいことにチャレンジすることに抵抗はないようです。
今はEplanのそうした仕組み化された図面の作り方を活かし、これまで属人化してバラバラだった設計から、会社として誰でも均一に設計ができるようなやり方に変えようと社内ルール、社内標準の整備を進めています。今までの良いところを残しつつ、Eplanの機能を使っていくようなものを考えています。
Eplanの導入効果
ーーEplanを導入した効果をどう感じていますか
設計工数で考えたら大きく変わってないと思いますが、細かなところでは色々と良い効果が出ています。便利な機能がたくさんあり、とても助かっています。
例えば、検図はとても楽になりました。Eplanの場合、図面を作る際に必ず情報も追記していかないといけないので、図面の記載内容と情報がすべて紐づいています。変更した際もすべて反映されるので、外形図と回路図、部品表にズレも起きないようになっています。だから図面を作る側のミスも減ったし、チェックする側としても、見なければいけないところを絞ることができ、とても効率的にできるようになりました。
他の電気CADの場合は、それが連動してないのですべての箇所に対して記入漏れやズレがないかをチェックしなければならず、とても大変でした。そこがEplanによって解決しました。
また、自動機能による効率化も感じています。Eplanで回路図を書いた後に、部品表や端子図を自動で生成できるようになりました。手配部門やパネル製作業者から部品表を出力して欲しいという依頼がよくあり、今までは都度、要求に応じたExcelを作って渡していました。Eplanになってからは必要なところを選んで簡単にExcelを出力でき、工数が大きく減りました。
Eplanのサポートの方にやりたいことや困っていることを伝えると、その多くはこの機能を使えばできますよというような形で実現への近道を教えてくれてとても助かっています。機能が豊富で、引き出しが多く、まだ自分たちが知らないことを教えてもらっています。
使いこなせる人材を増やし、設計効率化を進める
ーー今後について
まずはEplanにたくさん触れ、使える人と資産を増やしていくことに力を入れていきます。
当社はものづくりの会社であり、機械がメインで、電気部門は人が決して多くありません。今まで当社の電気設計部門の仕事は、仕様まとめ、図面作成、制御ソフトのプログラミング、現場立ち上げを一貫して同じ人が担当していました。一人ですべてをやらなければならず、負荷が非常に高い状態でした。これは時代的に変えていかなければいけないと思っています。
これからは、各工程を分業して効率化しようと考えています。作図をメインの仕事とする人にはEplanをもっと集中して触って使いこなせるようにしていきたいと思っています。人の手を使わずに、ソフトウェアができることはしてもらう。全員が最低限でもEplanを使える状態にしながら、その中にはプロフェッショナルもいるという形にしていきたい。
働き手が減るなかで、ムダな作業をなくし、全体では標準化をし、誰でも簡単に設計ができるようにする。効率的に設計ができる仕組みにし、そこから製造連携などにも取り組んでいきたいと考えています。