必要なのは地に足着いた効率化 課題発見力こそDX時代の必須スキル

先日、オムロン草津工場の見学をさせてもらった。草津工場はPLCやサーボドライバなど主にコントロール機器を製造している工場で、現場のいたるところでデータを元にしたカイゼンと自動化を進めていた。自動機が並んでロボットが何十台も高速で動いている無人化された近未来的な生産ラインといった派手さこそなかったが、身の丈に合った効率化を進めている良い工場という印象を持った。

とは言え、見た目が華やかで分かりやすい先進的な取り組みが無いわけではなく、例えば完成品のPLCを出荷場に運ぶのに4台のAMR(自律移動型搬送ロボット)を使って自動搬送を行なっていた。生産ラインから呼ばれて完成品を取りに行って、出荷場まで運んで下ろして、空箱を引き取って生産ラインに戻す。人手作業の代替と生産性の向上を実現していた。黙々とピストン輸送を絶え間なく行なうAMRの姿は健気で献身的で、白くて丸っこいスタイルと合わせて愛嬌があった。草津工場の皆さんもそう思っているようで、4台のAMRにはそれぞれ「ほたる」「てんとうむし」「こくわ」と虫にちなんだ愛称が付けられており(もう1台は不明)、現場でも頼りになる仲間として認識され、愛されていることが感じられて、心がホッコリした。

DXやデジタル化というと、ついつい新しい技術導入に興味の矛先が向き、そうした目新しさこそ正義で、逆に現場主導によるカイゼンやQC活動などは軽視されがちだ。しかし本質は、新しい技術はあくまでツールであり、現場の課題や悩みを解決するための1つの手段でしか無い。これは昔から言われている事だ。地に足着いたDXやデジタル化を進めるには、現場で働く人々が日々の業務に向き合いながら、主体的に課題を発見し解決実行をするという企業風土や文化が必要不可欠だ。「客の声を聞く」これは商売の鉄則であり、現場の生産性を上げるなら「現場の声を聞く」のが当たり前。現場の強さは現場にいる人の課題意識の強さで決まる。課題発見力こそ今の時代に求められるスキルであり、それを生かした効率化を進めることが大切だ。

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