山善は、ものづくり産業7大業種別の直近の課題と解決策について、ものづくり産業に携わる管理職以上の責任者700人を対象に調査し、その結果を「第1回ものづくり産業業種別課題と対策調査」としてまとめた。
ものづくり産業が直面する課題
ものづくり産業では「以前から直面している課題がある」企業が71%に達し、以前からの課題、直近3年以内の課題ともに1位「人材不足への対応」、2位が「IT活用/DX推進」、3位が「原材料価格高騰への対応」と変わらなかったが、直近3年以内に限ると、「エネルギー価格高騰への対応」「AI活用」「人件費高騰への対応」が上位に上がり、さらに「物流費高騰への対応」(14.6%)や「カーボンニュートラルへの対応」(12.6%)が課題トップ10に入って来た。
主な課題に対する解決策
そうした個々の課題に対する対策については、課題1位「人材不足への対応」に対しては「正社員の採用対象層の拡大」(36.4%)、「定年の引き上げ、シニア人材の再雇用」(30.8%)、「専門人材の確保」(26.2%)が上位に挙げられる一方で、外国人人材の雇用拡大(16.4%)や女性従業員の雇用拡大(14.0%)の実施企業も増えて来ている。
課題2位「IT活用/DX推進」に対しては「専門人材の確保」(35.6%)がトップになり、「IT・DXを活用した生産性の向上」(24.9%)、「正社員の採用対象層の拡大」(23.7%)が続いた。「シニア人材の活躍」(19.2%)「従業員の知識・スキルの底上げ」(19.2%)も高く、人材確保が重要と見ている。
課題3位「原材料価格高騰への対応」に対しては、上位は「販売製品の値上げ」(37.1%)、「製造工程の見直し」(18.9%)、「節電・節水」(16.0%)として自社の取り組みでの対応に加え、「サプライチェーンの評価・見直し」(14.9%)、「原材料調達先およびサプライチェーンの分散」(10.9%)など取引先も巻き込んだ形の対策も進んでいる。
成果が出ている/出ていないはほぼ同数
直近3年以内に直面するようになった課題に対する対策の成果について、対策を実施した企業の48%が「成果が出ている」、44%が「成果が出ていない」と回答し、拮抗。対策を実施しても半数は成果が出ていないことがわかった。
山善 産業ソリューション事業部 戦略企画部長 奥山 真吾氏によると、「課題1位の『人手不足』については、正社員としてひとつの企業で定年まで働く終身雇用を目指す方よりも、コロナ禍後は『スキルアップのために、転職するのもひとつの方法だ』と考える人が、より増えているように感じます。優秀な人材を流出させず確保するには、やはり賃金アップが重要であり、それが6位の「人件費高騰」にも繋がっているようです。『人件費高騰』については、若い人材の賃金は上がっているのに中堅〜ベテラン社員の賃金が上がらないため人材が流出するケースも起きているようです。人材が流動的なため社員に企業文化が根付かない、企業文化が浸透しないため人材が固定しないという悪循環になることもあります。
以前の課題の4位「業務効率化・生産性向上」が直近3年以内では8位に下がり、「AI活用」が7位から5位に上がってきているのは、ここ数年でAI技術が進化したことが理由です。以前は「業務効率化・生産性向上」の方策が曖昧だったところ、AI活用という対策が見えてきたと考えられます。一方で、AI活用には専門人材が不可欠であり、その確保が課題となっています」とした。
さらに直近の課題として上がって来ているものについても「『物流費の高騰への対応』は、2024年4月にトラックドライバーの労働時間の上限が規制されたことにより、輸送能力が不足する「物流の2024年問題」が起きています。それまでは、物流側よりも荷主側の立場が強かったのですが、近年は逆転しました。また、倉庫業では環境改善、省力化が進められています。
ランク外から10位に上がってきた「カーボンニュートラルへの対応」にも注目したいところです。近年は、CO2削減やカーボンニュートラルに取り組んでいない企業は各方面から評価を得にくく、企業ブランドの低下を招くことに直結します。カーボンニュートラルへの対応は、大手企業を中心に広がってきています。その理由は、欧米をマーケットにする場合はカーボンニュートラルへの対応が必須となるからです。中小企業や、アセアンでビジネスを展開している企業は、まだ対応に消極的なところが多いようです」としている。