新しいモノづくりの考え方 【第11回】これからの日本式デジタル化⑩

日本の製造業の強みであるカイゼンに目を向けて、デジタルの導入でカイゼンがより大きな成果を出すようにするという流れで話をしてきました。先回までは現場での話でしたが、今回は経営者の仕事をカイゼンするに当たって、デジタルがどのように有効かについて身近なとことで考えてみたいと思います。

4つの例をあげて説明して参りますが、全員の力を総動員して会社を改革しようとしたときに、それに必要な社員の情報がどれだけ経営者に届いているかはとても重要な要素です。知りたいと思っていてもなかなか知ることができない、やってみたいと思っても何から始めて良いかわからない情報は多いものです。しかしこれまでは難しかったけれど、デジタルを使うと意外と簡単に分かることが増えてきています。

1.若手社員の隠れた能力の発見:
社員がものすごい能力を持っていても、経営者がそれを知らずにいることは多いと思います。例えば、今の若い人たちの中にはYouTube や Instagram 等のSNSで自分のチャンネルを持っている人が少なからずいます。もし社員の中にそのような人がいたら、その人に使い方を聞いてみてはいかがでしょうか。日常の中では全く見せないすごい能力を発見できるかもしれません。私の指導先にもびっくりするようなことができる若手が見つかり、新しい仕事が始まった例が既に数件あります。

2.社内プロジェクトの進捗と会社経営方針に対する理解の把握:
社内にはいくつかのプロジェクトが動いていると思いますが、そのプロジェクト活動に社長も参加してみることはいかがでしょうか。そこでの会話から社員の経営方針に対する理解度が分かります。そしてその時に社長のスマホで議論の様子をビデオに撮ってみます。後で録画を再生して、社長がプロジェクトの進行を更に理解することと、プロジェクトを忘れないということになり、プロジェクトの緊張感が高まります。

3.定期的な面談の実行:
社長は社員と定期的に面談をして彼らの考えを知ったり、お互いの理解を深めたりしたいと思っていても、なかなかスケジュールが合わずに後延ばしになってしまうことが多いものです。しかしZoomなどを活用すれば、場所と時間の制約が減るのでかなり実現しやすくなります。人によっては直接面談よりもウェブの方が本音を話せるといった人もいます。またチャット機能も活用することで、新しい情報もより多く入るでしょう。中には匿名の連絡手段もあるので内部通報なども筆跡が残らず情報を出せて、意見が出しやすくなるなどのウェブならではの特長もあり活用するべきです。

4.社長がどのくらい、社員の話を聞いているかの把握:
会議の様子をビデオに撮って、再生してみましょう。改めて自分の様子を客観的に見てみることで、いろいろな発見があるでしょう。よくあるのは、社員の話を最後まで聞かずに話し始めるとか、かなりの頻度で話を遮っているなどがあります。自分ではかなり社員の話を聞いているつもりの方でも、明らかに話し過ぎていると反省されることが多いのです。

情報のやり取りについての4項目を上げましたが、これらはすべて人に頼まず自分でできることばかりです。

社長と従業員が情報を共有化してお互いを理解することは経営を良くするのにとても大切なことです。デジタルでできるようになったことを活用して前進いたしましょう!

■プロフィール

柿内幸夫
1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。
経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長改善コンサルタント、工学博士技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授
著書「カイゼン4.0-スタンフォード発企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所<101項>」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など

一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
■詳細・入会はこちら

https://www.kaizenproject.jp

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