日本電気計測器工業会会員各位、関係団体の皆様、あけましておめでとうございます。 新年を迎えるにあたり、皆様のご健勝と益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。
私が会長職を拝命してから早や1年半が過ぎ、この間、会員各位と共に、カーボンニュートラル社会実現への貢献、当業界の知名度の向上、そしてすべての会員企業の皆様の満足度を向上すべく、活動してまいりました。新しい年の幕開けに際し、昨年の成果を振り返りつつ、今年の展望をお伝えいたしたく思います。
まず、我々を取り巻く環境についてですが、地政学的リスクの高まりと不安定な経済情勢が続いています。特に、新年に発足するアメリカの新政権は、世界経済や市場に大きな影響を与える可能性があります。貿易政策や関税措置、中国との関係、さらには半導体技術の輸出規制などは予測が難しく、不透明な要素として懸念されています。また、自動車業界ではEVや燃料電池車の普及に関する政策、エネルギー業界では石油を含む方針が未確定であり、これらの分野での市場変動が懸念されています。加えて、米国が再び世界的なCO2削減の枠組みから離脱する可能性も指摘されており、こうした要因が電気計測器業界に与える影響は非常に大きいと言えます。
米国以外に目を向けると、ドイツ、フランス、韓国などでの政局不安、ドイツを中心とした自動車産業の停滞、さらには世界的な電気自動車の売上減少といった課題が挙げられます。また、中東やウクライナにおける紛争やエネルギー供給への懸念も引き続き注目すべき点です。このような困難な状況の中で、持続可能なエネルギー社会の構築や新たな産業構造への移行が、世界的な課題として求められています。
昨年の年初に開催されたIIFES2024ではカーボンニュートラルや次世代通信技術「6G」に焦点を当て、国内外の注目を集める展示会となりました。会員企業と来場者の間で実りある対話が行われ、新たなビジネス機会の創出につながりました。
当工業会が単独で主催している唯一の展示会である昨年秋の計測展2024 OSAKAでは、「カーボンニュートラルへ、はかる・見える・変える」をテーマに開催し、従来の展示エリアに加えて、交流ゾーンにおいてサイバーセキュリティ、省エネルギー、新エネルギー、産学交流などの展示も加えました。特に、学生向けプログラムでは、次世代の技術者に電気計測器業界への関心を高めてもらう企画を実行し、大学や学生との連携の重要性を実感する機会となりました。またJEMIMAにおける展示会のあり方を議論し、今後はお客様との接点に加えて、出展者、来場者が「気づく、考える、行動に移す」ことが出来るような多様な潜在ニーズへ応える、新たな形のイベントに発展させて行きたく思います。
2024年初頭に述べた所感では、DX(デジタルトランスフォーメーション)からGX(グリーントランスフォーメーション)への移行、電気計測器業界の知名度向上、会員企業の満足度向上という3つの方針を掲げました。この1年半の成果を以下に振り返ります。
「DXからGXへ」、脱炭素社会実現への貢献に関しては、カーボンフットプリントや国際規格などに関する講演会を開催し、会員企業のGXに向けた取り組みを支援しました。
「電気計測器業界の知名度向上」では若い世代との交流を深めるため、先に述べたように計測展2024 OSAKAで学生向けプログラムを実施し、業界の魅力を次世代に伝える新たな一歩を踏み出しました。
「すべての会員企業の満足度向上」については、人財育成研修事業、政策研究会セミナーを継続し、新たにアジアセミナーを追加開催しました。IEC TC65国内委員会との連携では、国際標準化活動を通じたグローバルエンジニア人財育成プログラムの具体化へ検討を進めています。さらにコト売りタスクフォースは、「コト売りビジネス調査報告~DX時代のビジネス変革のために~」と題した最終報告書を発行するなど、会員企業にとって実用的な情報を提供し、交流の場を拡充しました。
2023年度の海外拠点の売上を含む電気計測器の総売上高は1兆735億円と、対前年度比で9.4%増となりました。主要なトレンドとして、プロセスオートメーションを支える機器、半導体製造向け計測器の需要増が挙げられます。2024年度の売上は、前年比から横ばいを見込んでいますが、2024~2028年度の年平均成長率は1.5%で推移すると見通しております。引き続きSDGsによる投資と生成AIの普及に伴うIT機器や関連産業からの増加が要因と見ています。平素より経済産業省をはじめ、関係省庁、関連団体の皆様へ、当工業会の活動にご支援いただき感謝しております。また、会員各社の皆様による不断の経営努力に感謝いたしますとともに、工業会の活動への多大なるご支援とご参画をいただき、厚く御礼申し上げます。2025年以降、半導体産業の更なる成長、モビリティ社会の変革、エネルギー供給構造の変化などが進む中、電気計測器はカーボンニュートラル社会実現の鍵を握る重要な役割を果たします。私たちは、これらの変化に迅速に対応し、革新的なソリューションを提供してまいります。
最後になりますが、日頃よりJEMIMAの活動にご理解とご協力を賜っております会員企業の皆様、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。本年も引き続き、皆様と共に電気計測器業界の発展に尽力してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。