【2025年 年頭所感】一般社団法人 日本工作機械工業会 会長 稲葉 善治「コト」支え社会課題解決を

2025年の新春を迎え、謹んで年頭の御祝詞を申し上げます。

さて、昨年を振り返りますと、ロシアのウクライナ侵攻の行方が益々深刻化する中で中東での軍事衝突もパレスチナから周辺諸国へと拡大の様相を呈するなど、地政学的リスクが世界各地域で懸念されております。また、欧米の高金利による経済活動の低迷や中国での不動産不良債権問題に端を発した経済の混迷などが続いており、世界情勢は混沌とした中で不透明・不確実な状況が続いた1年でした。

一方で、日本の工作機械業界は日工会を中心に、デジタル・グリーン・レジリエンスをキーワードに新製品・新技術の開発を力強く進めて参りました。この結果、工作機械の受注総額は昨年の年初に発表した1兆5千億円には僅かに届かなかったものの、高水準を維持する事が出来ました。

さて、昨年11月には「技術のタスキで未来へつなぐ」をコンセプトに、我が国工作機械業界最大のイベントであるJIMTOF 2024を東京ビッグサイトで開催し、日本が誇る最先端の工作機械技術・製品を世界に向けて発信致しました。来場者数は前回比13.0%増となる12.9万人、うち海外からの来場者数は前回比2倍強の1万人余を記録する盛況でした。また、今回のJIMTOFでは南展示棟において、特別併催展としてAdditive Manufacturing Area in JIMTOFを催しました。更に、同館において出展者と学生を繋ぐアカデミックエリアを設置する事により学生と現役世代の交流の場を設け、来場者参加型の企画展示も実施致しました。また、国内外の技術者が集う「国際工作機械技術者会議」や全国の学生を招待して実施する「工作機械トップセミナー」など、盛り沢山の併催行事を開催することにより、モノづくりの醍醐味、工作機械産業の魅力を学生諸君に力強く発信致しました。こうした数々の企画を通して、来場者の皆様に工作機械と製造業の明るい未来を感じていただけたと存じます。

本年につきましても、世界各地の地政学的リスクや、国際社会の分断により、通商環境は一層不安定かつ複雑化していくと思われます。そのような状況の中でも、世界の産業界はDX・GXを核とする技術革新を加速させております。日本の工作機械業界としても、世界の先頭に立ってIoT・環境・自動化等の技術を搭載した高付加価値な工作機械を開発して参ります。一方で、我が国においては、ビンテージの古い老朽設備の更新、少子高齢化による労働力人材の不足といった課題を抱えており、その対応を進めて行かねばなりません。

日本の工作機械業界は、世界最高の性能と信頼性を誇るモノとしての工作機械の供給を通じてコトづくりを支え、社会課題の解決に貢献する活動を積極的に展開して参ります。関係各位には当工業会の事業に対する一層のご理解とご支援をお願い申し上げます。

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