【2025年 年頭所感】一般社団法人 ソフトウェア協会 会長 田中 邦裕 デジタル社会到来に向けて

皆さま、新年明けましておめでとうございます。当協会も私が2期目に入るとともに、役員も新体制となりました。また、平素より当協会の事業・活動に対し格段のご理解・ご支援を賜り、厚く御礼申し上げますとともに、令和7年の年頭にあたり一言ご挨拶申し上げます。
 昨年は9月に自民党が岸田氏に代わり石破氏が総裁となりましたが、衆院選挙の結果少数与党となりました。また、11月の米大統領選挙ではトランプ氏がハリス副大統領を破り、間もなく米大統領となることで、ウクライナ紛争、米中関係、地球環境問題など大幅な政策転換が予想されるなど、今後の世界の政治・経済情勢は不透明感を増しています。
 また、わが国経済に目を向けますと、日本銀行がマイナス金利政策を転換し、8月にはついにゼロ金利が解除され、金利のある世界に戻りました。一方、賃金面では、昨年春闘で5%台の賃上げを実現したものの、インフレはそれ以上進み、実質賃金はマイナスです。これに着目した国民民主党が「国民の手取りの増加を!」をキャッチフレーズに衆院選で大躍進したのは当然かもしれません。政治的理由で年収103万円の壁はある程度是正されることと考えられますが、今後実質的な一層の賃金上昇、そのための生産性向上にはあらゆる分野におけるデジタル化が不可欠であり、石破政権後もデジタル社会の実現に向けた重点計画(令和6年6月閣議決定)、AI戦略会議、デジタル田園都市国家構想総合戦略などのデジタル政策の一層の推進を期待しております。
 経済産業省も、既に補正予算で措置された数兆円の財源により、本格的な先端半導体の国内量産化やAI分野の計算基盤強化及びAIモデルの国内開発企業への支援を引き続き強力に推進しています。また、デジタル人材についても生成AIの本格普及を見据えてデジタルスキル標準(DSS)の見直しも進められています。
 AI分野では欧米諸国がそのリスクへの懸念からハードローによる規制強化に動き出しておりますが、内閣府ではAI戦略会議傘下のAI制度研究会においてイノベーションを阻害しないようソフトローを基本としつつ、AIを取り巻くグローバルな規制の動向との協調をいかに取るべきか検討している状況です。
 一方、AIが変革するデジタル社会の到来に向けて、当協会は元々ソフトウエアベンダーを中心とする業界団体でしたが、協会として今後どうあるべきかについて、業界団体という枠にさえこだわららず幹部有志により検討を始めるとともに、これまで述べた政府のデジタル施策の推進状況に対応して各種委員会および研究会等における活動も活発化しています。
 例えばAI分野では政策、法務・知財、技術、人材など各委員会がそれぞれの視点でAIをテーマにしたセミナーや講演会を頻繁に開催し、会員に積極的にAIに関する有益な情報発信を行うとともに、政府のAI戦略会議およびその傘下のAI制度研究会に私をはじめ当協会の幹部も構成員として参画し、政府のAI政策の立案に貢献しました。また、ISMAPについても与党やデジタル庁との意見交換を通じて本制度の費用対効果の是正を訴え、政府・与党を動かしつつあります。
 昨年の政策要望により実現したイノベーション拠点税制については、残念ながらソフトウエアに関してはAI分野に限定されましたが、その運用については当協会も一定の役割を果たし、引き続き税制適用の利便性向上やAI分野からの範囲拡大を目指していきたいと考えています。さらに「デジタル田園都市国家構想」に呼応して、政策委員会傘下の「スマートシティ研究会」は当協会と包括連携協定を結んだ佐賀県武雄市の「デジタル田園都市国家構想」事業を支援し同市から高く評価されたことを受け、同研究会に令和6年度SAJ活動功績を授与しました。地域デジタル推進委員会も地域企業のデジタル化を支援するとともに、大阪公立大学工業高等専門学校と連携協定を締結するなどその活動を一層活発化させています。また、この他、政策委員会に医療DXWGや地域デジタル推進委員会にWeb3ビジネス研究会を立ち上げるなどの研究会活動も拡大しました。
 さらに、当協会は広報委員会が当協会の広報戦略を主導して協会活動をタイムリーに知らしめるオウンドメディアを一層充実させるとともに、会員マイページ導入により、会員が直接、会員情報を修正でき、当協会の主催する各種セミナーや懇親会などへワンクリックで参加できるなど利便性が大幅に向上しました。また当協会のホームページも刷新し、会員同士がコミュニケーションしやすい環境も整備しました。
 会員からの期待が高い政策提言については、これまでジャパンクラウドへの支援やイノベーション拠点税制など次々と実現してまいりました。今後とも経済産業省、総務省、厚生労働省、デジタル庁、財務省、国税庁、公正取引委員会、消費者庁、個人情報保護委員会などから出される各種方針、報告書、法令改正などへのパブリックコメントの提出や当局との意見交換などにも積極的に対応するなど政策当局との一層の関係強化を図るとともに、引き続き日本IT団体連盟など他団体と連携しながら、会員からの政策要望を積極的に取り上げ、その実現に努めてまいります。
 また、当協会が事務局を請け負っている人事労務システム協議会(HRSA)(旧社会保険システム連絡協議会)、デジタルインボイス推進協議会(EIPA)と連携し、会員企業の人事労務システムやインボイス制度のデジタル化へ対応なども積極的に支援してまいります。
 デジタル社会の進展とともに、残念ながらサイバー攻撃への脅威はますます高まっており、一層の備えが必要となっています。このため、当協会ではサイバーセキュリティ委員会(旧セキュリティ委員会)を復活し、Software ISACを中心にサイバー攻撃に対する注意喚起やレポートなどを公表するとともに、引き続きセミナー等を通じて会員企業に対してサイバーセキュリティへの対応への支援を積極的に行います。また、令和6年度も厚生労働省事業に採択され、つるぎ町立半田病院(徳島)、地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター(大阪)へのランサムウエアによるサイバー攻撃を教訓にして、当協会として医療機関、保健所向けにサイバーセキュリティに関する座学、演習、ワークショップなど幅広い研修を実施するとともに、それら研修コンテンツを当協会が運営する「医療機関向けセキュリティ教育支援ポータルサイト」(MIST:Medical Information Security Training)に公開しております。今後も社会からの要請に応じて可能な範囲で医療機関向けのサイバーセキュリティ対策にも協力していく所存です。
 さらにIT業界内は恒常的にデジタル人材の不足が深刻化しており、当協会も厚生労働省の支援を受けて、他業界で非正規職に従事している方々に比較的短期間でデジタル分野の訓練を施し、IT業界に正規職で就業していただけるプログラムを実施しております。今後ともこれらの成果の活用を念頭におきつつ、人材委員会を中心に会員企業のデジタル人材不足問題に積極的に取り組んでまいります。また、次世代のIT人材の発掘・育成を目指したU-22プログラミング・コンテストについては、協賛企業と協力しつつ今後とも一層の充実に努めるとともに、IPA未踏IT人材発掘・育成事業とも協力し、我が国における高度なデジタル人材の育成に貢献してまいります。
 デジタル社会において、個人情報の意図しない漏洩を防ぐことはますます重要となっています。今後とも当協会は、プライバシーマーク指定審査機関として審査員を充実し、増大する会員からの審査ニーズに対応してまいります。
 さらに、当協会では、IT機器などの廃棄から生じる機密情報の漏洩を防ぐため、第三者によるデータ消去証明書の発行事業を引き続き推進するとともに、消去ソフトウエアおよび消去事業者の認証を行うデータ適正消去実行証明協議会(ADEC)の活動を事務局として支援してまいります。
 次に、ソフトウエア品質の確保のためのPSQ認証制度ですが、クラウド/SaaSを含むソフトウエア製品の第三者適合性評価であるPSQ-Standard認証および自社で評価を行うPSQ-Lite認証を今後とも実施してまいります。
 最後になりますが、当協会は関係各府省及び他のIT・デジタル関係団体とも連携して、ソフトウエアに関わる全ての組織(チーム)をサポートして、Software Everywhere 「全てはソフトウエアで動く、これからのデジタル社会へ」を目指します。引き続き皆さまのご支援およびご協力をよろしくお願い申し上げて新年のご挨拶とさせて頂きます。

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