第8回インフラメンテナンス大賞 受賞者決定【老朽化と人手不足を技術や知恵、仕組みで解決】内閣総理大臣賞にFracta Japanの上下水道事業のDX

経済産業省と国土交通省、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、環境省、防衛省は、国内の社会インフラのメンテナンスに関わる優れた取り組みや技術開発を表彰する「インフラメンテナンス大賞」について、第8回目の受賞者を発表した。各省大臣賞、特別賞、優秀賞が選ばれ、最上位の内閣総理大臣賞には、Fracta Japanの「上下水道事業のDX:ビッグデータ×AIによる管路リスクの予測診断」が選ばれた。労働人口の減少と設備老朽化によりメンテナンス人材不足が進む中、AIやビッグデータ、ロボット活用でメンテナンスを自動化・高度化すると同時に、業務人材の育成や自治体連携などの取り組みにも注目が集まった。

内閣総理大臣賞はAIを活用した上下水道の管路劣化の予測診断

内閣総理大臣賞に選ばれたFracta Japanの「上下水道事業のDX:ビッグデータ×AIによる管路リスクの予測診断」は、世界で初めて水道管の劣化診断にAIを適用したソリューション。同社の管路劣化診断技術は、管路の埋設環境と管路情報、漏水情報などの組み合わせをAIに学習させ傾向をつかみ、将来の劣化リスクを算出。従来の経年重視の劣化予測式、管体調査などの直接確認する手法等に比べて、水道管を掘削することなく、高精度に劣化リスクを把握できることが評価された。

経産大臣賞は配電設備の点検効率化とガス配管の入替工事法

経済産業大臣賞は2つの技術が受賞。
中国電力ネットワークによる「Mobile Mapping Systemを活用した配電設備の点検業務高度化による効率化」は、同社が維持・管理する約200万本の電柱について、3次元画像を取得し、机上で位置情報、距離および角度等を計測することが可能なMobile Mapping System(MMS)を活用する仕組み。高経年化設備の更新工事等における設計業務や設備の健全性を確認するための巡視業務等について、これらの業務に必要な現場調査を現場出向からMMS画像の机上確認へ見直すことが可能となった。これにより膨大かつ面的な広がりのある配電設備の運用保守において、相当な業務負担となる現場調査を省力化し、効率的な業務運営を実現した。
東邦ガスネットワークの「ガス用ダクタイル鋳鉄管を対象とした非開削入替工法「STREAM工法」とその関連技術の開発」は、ガス導管工事では道路を掘削機で溝状に掘削すると交通渋滞の発生や道路舗装への影響が懸念され、さらに掘削土の処分や埋戻し土の入手が必要となり、環境負荷も大きくなってしまう。それに対してSTREAM工法は、入替区間の前後だけを掘削し、既設のダクタイル鋳鉄管を切断して引き込み側からロッドを挿入し、ロッドに刃と入れ替えるPE管を装着して出口からロッドを引っ張ると、刃が古い管を切断し、その後をPE管が通ることで、古い鋳鉄管からPE管に置き換わるというもの。

国交大臣賞はインフラメンテナンス人材の育成など

国土交通大臣賞は3つの技術が受賞した。
パシフィックコンサルタンツの「三条市 社会資本に係る包括的維持管理業務(嵐北地区)」は、三条市の中心部を含む「嵐北地区」において、市が管理する道路、橋梁、公園、水路といった複数分野を跨いだ日常的な維持管理について、複数年契約でまとめて発注する、分野横断型の包括的民間委託にいち早く取り組んだ業務として評価された。細かい対応を含めて年間2000件を超える現場対応が一つの契約でカバーされている。
REIM産学連携コンソーシアムの「KOSEN型産官学プラス地域共同インフラメンテナンス人材育成システムの構築」は、舞鶴、福島、長岡、福井、香川の5高専を中心に産官学と地域でREIM産学連携コンソーシアムを発足し、“地元のインフラは地元で守る”をモットーに地域に軸足を置くインフラメンテナンス人材育成システム。各地域の高専で地元自治体・企業等の技術者へリカレント教育を実施し、技術者教育を担うインフラメンテナンス分野の実務家教員を育成することで、持続可能なリカレント教育を全国の高専へ展開する活動を実施。また、官民の賛同を得て同取組の継続を支援する一般財団法人高専インフラメンテナンス人材育成推進機構も設立した。
東洋建設の「 港湾コンクリート構造 高機能型塗装「ワンダーコーティングシステムW-MG」」は、陸上の鉄筋コンクリート構造物で落書き防止や中性化の対策として使用されてきたガラス質膜塗装
を港湾用材料へと改良した透明な表面塗装工法。港湾施設における鉄筋コンクリート部材を対象とする塩害対策として、新設・既設構造物、プレキャスト構造物に適用できる。

総務大臣賞はデータセンターの設備点検のロボット化など

総務大臣賞は2技術が受賞
NTTデータの「業務DXロボットugo(ユーゴー)を使ったデータセンター設備点検業務の自動化/遠隔化」は、自律走行・遠隔操作が可能な業務DXロボット「ugo」を活用し、24時間365日稼働が必要なデータセンターの設備点検を効率化したもの。AI技術を搭載したロボットugoが電源設備室の自動点検を行い、異常時は遠隔から即座に現場の様子を確認することが可能となる。これより、日次点検時
間の約50%削減や点検頻度と品質の向上、さらには夜間や人手が少ない時間帯のトラブルへの迅速な対応が実現でき、働き方変革や業務効率化に寄与している。
伸浩技建の「トンネル覆工展開図自動作成システム」は、これまでのトンネル点検時の変状展開図作成は、覆工にマーキングされた変状の形状や寸法を、点検員が手作業でスケッチし、そのスケッチを基にCADトレースし、覆工変状展開図の作成を行っていたが。同システムでは、3次元レーザースキャナを使って、覆工にマーキングされた変状の形状や寸法を高精度・高速に3次元カラー画像として取得し、専用ソフトウェアを使用して、覆工画像展開図と覆工変状展開図を自動で作成できるもの。現場でのスケッチ作業、点検調書作成を効率的で高精度に作成することが可能になった。

農水大臣賞はインフラ管理の自治体連携とデータ活用

農林水産大臣賞は3つの技術が受賞。
筑後川下流域農業開発事業促進協議会の「CAPS(先行排水情報共有システム)の導入によるクリーク先行排水の広域化促進」は、筑後川下流域農業開発事業促進協議会は土地改良事業の促進を図るために複数の市町、土地改良区により構成されているが、議会ではCAPSを導入し、大雨が予測された場合に洪水調節容量を確保するクリークの先行排水を、上流から下流まで市町を跨ぐ広域的な取組として推進している。
香川用水土地改良区の「地域住民と一体となった農業水利施設の維持管理」は、香川用水土地改良区が管理する(L=59km)施設の異常事態での迅速な対応を図るため、沿線の地域住民等を施設巡視員として登録し、施設の変状等について随時情報提供をいただく「施設巡視員制度」に取り組んでいる。 また、施設の清掃体験や出前授業を通じて香川用水の重要性や水の大切さを学んでもらう「香川用水クリーンアップ大作戦」や、企業等との保全管理に関する連携協定の締結など、地域住民等との協働による管理体制を構築し、用水が地域の社会的公有財産であるという意識を醸成することで維持管理への理解を促進している。
大石建設の「サブマリンクリーナー工法による水質環境に配慮した係留施設や水域施設のメンテナンス」は、サブマリンクリーナー(SMC)工法は濁りを出さず薄層浚渫が可能な特殊な工法で、海上養殖に対する汚濁等の水質環境への配慮が必要な漁港付近や係留施設の前面、浮桟橋の下面など、構造上や作業スペースなどの理由でグラブ浚渫船やポンプ浚渫船では施工できない箇所での浚渫に活用されている。

環境大臣賞は廃棄物最終処分場の人材育成

環境大臣賞は、最終処分場技術システム研究協会の「廃棄物最終処分場の機能検査者育成」が受賞。4000カ所以上ある廃棄物最終処分場は概ね埋立期間15年間で計画され、埋立終了後も廃棄物が周辺環境に支障を与えない状態となるまで維持管理が行われているが、現状は50年以上と大幅に計画期間を超えて使用されているケースも多い。そのため中、長期にわたり安全で安心な最終処分場の機能を維持していくことが求められており、同会では、施設の機能検査を適正に行うことができる人材育成を目指して最終処分場機能検査者資格認定制度を確立し、最終処分場が抱える諸問題の早期発見と機能保全を可能とする機能検査を実施している。

防衛大臣賞はわだち掘れがほぼ起きない舗装技術

防衛大臣賞は、ニチレキの「耐流動性を高めた舗装技術(エプロンの補修事例)」が受賞した。
自衛隊の航空機には、民間航空機の約1.5倍、大型車両(トラック車両)の約3倍といった非常に大きな接地圧を有する機種がある。そのため、航空機がアスファルト舗装上で静止、緩速走行をするとアスファルト混合物の流動によるわだち掘れが顕著となる。それに対し同社では、特に耐流動性の高いアスファルト混合物を開発し、有効な施工厚を考慮して自衛隊施設のエプロンに適用した結果、2年(2夏)経過してもわだち掘れがほとんど生じず良好な状態を保ち、技術の有効性を証明している。

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