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先日、子どもと一緒に「AIによってなくなる仕事」の一覧が掲載された記事を読みました。そこには、事務職やレジ係、コールセンター業務といった職種が並び、さらにプログラミングの一部もAIが代替する可能性があると書かれていました。子どもは「パソコンに強い人なら大丈夫でしょ?」と何気なく言いましたが、その言葉に少し考えさせられました。もしAIがコードを書く時代が来るとすれば、電気エンジニアの仕事も変わるのではないか。そう思いながら、電気エンジニアの未来について改めて考えてみました。
近年の製造業では、AIの進化により多くの業務が自動化されつつあります。例えば、品質検査ではAIを活用した画像認識技術によって製品の欠陥や異常を自動検出する仕組みが導入されています。予知保全の分野では、センサーとAIを組み合わせることで機械の異常を事前に検知し、故障を未然に防ぐ取り組みが進められています。さらに、生産計画の最適化では、AIが需要予測や在庫データを分析し、効率的な生産スケジュールを立案するケースも増えてきました。このように、大量のデータを処理し、最適な判断を迅速に下すことができるAIは、人間が行っていた細かな作業の多くを置き換える可能性を持っています。
電気エンジニアの仕事も、AIの影響を受けて変化していくことが予想されます。回路設計では、AIが過去の設計データを学習し、最適な回路を自動で作成する技術が発展しています。PLCやラダー制御の分野では、AIが機械の動作パターンを分析し、自動で制御プログラムを生成する試みが進められています。また、設備のメンテナンスでは、AIがセンサーからのデータを解析し、故障の兆候を予測する予知保全技術が進化しており、これまでエンジニアが行っていた点検作業の一部が不要になる可能性もあります。
特に、プログラミングの自動化には大きな驚きを感じました。その代表例が、アメリカのGitHub(ギットハブ)が提供する「GitHub Copilot」です。AIがコードを自動生成してくれるというのは非常に画期的な技術です。しかし、ある程度の経験がないと危険だとも感じています。コードの意味を理解しないまま開発を進めると、後々の改修やトラブル対応が自分の力でできなくなる恐れがあるからです。
こうしたAIによる自動化が進む中で、電気エンジニアに求められるのは「AIを使われる側」ではなく「AIを使う側」に回ることだと考えています。特にDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む現在、収集したデータを分析するスキルの重要性はますます高まっています。IoT技術の発展により、工場では大量のデータがリアルタイムで取得できるようになりました。しかし、それらを有効活用しなければ、単なる「数字の羅列」に過ぎません。エネルギー消費の最適化や生産ラインのボトルネックの特定、品質管理の改善など、データを正しく解析し、実際の業務改善につなげることが、エンジニアにとっての新たな役割となります。また、AIを活用したシステム設計や、自動化技術の導入・管理も、今後の重要なスキルになるでしょう。単純なプログラム作成がAIに代替される時代では、「どのようにAIを活用し、システム全体を最適化するか」が問われるようになります。これまでのエンジニアリングは、機器や制御の設計に重点が置かれていましたが、これからは「AIを使って何を実現するか」という視点が求められると感じています。
数年後を考えると、不安になることもあります。しかし、AIの進化は電気エンジニアにとって脅威ではなく、新たなチャンスとも捉えることができます。電気エンジニアとしての専門知識を活かしつつ、AIを上手に取り入れることで、より付加価値の高い仕事ができるようになるはずです。
「AIがプログラムを作るなら、将来エンジニアは必要ないの?」
そう子どもに聞かれた私は、「専門知識に加えて、AIを使いこなせるエンジニアが必要になってくると思うよ」と答えました。
これからの電気エンジニアには、AIやDXによるデータ分析力を武器に、新たな価値を生み出していくことが求められるのではないでしょうか。
【著者プロフィール】
シマタケ
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共働きの子育て会社員。工場で15年間働く電気エンジニア。現在は某製造メーカーの生産技術担当。エネルギー管理士、第3種電気主任技術者、第2種電気工事士
機械保全技能士電機系2級、工事担任者(現DD第1種)、2級ボイラー技士、消防設備士(乙6、7)、危険物取扱者(乙4)など多数の国家資格を取得。心理学を勉強中でメンタルケア心理士、行動心理士も取得。
「電気エンジニアのツボ」でブログとYoutubeで情報を発信中